今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

   日本丸  石澤 青珠

 秋天を仰ぐとは胸ひらくこと

 帆綱一本疎かならず野分雲

 小鳥来る船長服の金モール

 船上のピアノの余生星づくよ

 開港の馬車道汽車道小鳥来る

 秋天へ全帆揚げよ日本丸

 

   夭逝   中臺 誠一

 「懇積院實道」の(そく)秋寒し

 夭逝の息の自転車秋の風

 台風や息の世話ぶり見えぬ夜

 菊日和とげぬき地蔵の夫婦連れ

 敬老日戦の話とぎれがち

 わざをぎに大津絵節や秋の夜

 

   横浜秋天  松岡 洋太

 横浜秋天ソフトクリーム直立す

 鰯雲放射線科は奥の奥

 余生とは薬飲むこと秋の空

 小鳥来て「藤沢銀座」らしくなる

 高階に海の光るや浦祭

 鳥渡る海へ張り出す日本丸


 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

   釣瓶落し今日を手放さうかと思ふ  高久 久美子

 秋の日は井戸の釣瓶がすとんと落ちるように早い。「釣瓶落し」で

 季語になる。「今日を手放さうかと思ふ」は、丁寧に過ごした

 今日一日への別れを哀惜をもって詠んで心打たれた。

  主観的な表現ではあるが、大いに実感を伴い、作者にとって

 大切な一日であったことが伺えて魅力的な一句であった。

 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

    小鳥来る聖フランシスコの日のマスト  渋谷 乃里子

  聖フランシスコは、アッシジのフランシスコ、フランシスコ修道会の

 創立者である。亡くなった日が、十月三日、私たちが日本丸の帆船を

 見て、吟行会を行った日であった。作者にとっては特別の日でもあった

のだ。今日は聖フランシスコの日であると、しみじみマストを見上げ

 られ
たのであろう。