清韻集・風韻集・同人集・繪硝子集より   和田 順子選
   
   家籠り庭ごもりして大暑かな      鈴木 喜美恵

  土用波闇夜は音の育ちたる       細川 普士子

  陶枕やわが石頭よせつけず       向笠 千鶴子

  幟十基東都も端の夏越かな       河合 寿子

  ビートルズアイスコーヒー来るまでの  長崎 友子

  青蔦や扉の重きワイン蔵        岩田 洋子

  鉾まつり歳月ぎいと動きだす      石澤 青珠

  日の強きところひたすら蟻の列     下島 正路

  百年の山車の傷みに触れにけり     原 静枝

  足早の蟹や踏切見えてきて       嶋村 恵子

  万緑を支へて沈みさうな島       大町 湖月

  雲の峰目鼻つけたき一つあり      吉田 玲子

  人減りゆく村サルビアの赤赤と     千葉 喬子

  団欒に斬り込んでくる金亀子      田島 柳水

  図書館のブックポストや梅雨の蝶    山口 冨美子

 

    上掲の作品について、一句鑑賞文をお寄せください。

   一句について200字以内、編集部宛てFAX042-473-3632)にて

   お送りください。掲載させていただいた場合、俳誌「繪硝子」を

   贈呈いたします。

 選評一句 (同人集作品より)
 

   日の強きところひたすら蟻の列     下島 正路


  日差しの強いところに蟻の列が出来ている。「ひたすら」と

 表現したいような、元気でせわしげな蟻の行列である。

  夏の時期、人間は日陰を好むが蟻はどうなのであろう。

 目的のためなら日陰日向は関係ないように思える。

  しかし、この句、写生句でありながら読むものに何かを感じ

 させる。夏という季節もある。戦争の記憶と繋がる人も多いだろう。

 人間は蟻ではない。目的のためにひたすら行列を作った戦場。

 食料に行列を作った本土。
こういう記憶を持つ人はだんだん少なく

 なったが、何かを呼び起こす写生句は、それだけ大きな句である。

 

 選評一句 (繪硝子集作品より)
 
   

    雲の峰目鼻つけたき一つあり    吉田 玲子
  
                                                               
入道雲を見て、こんな風に思ったことは誰しもあるだろう。
 しかし、何とか格好良く詠もうとし素直にありのまま詠むことに
 躊躇してしまうのが
慣れて来た俳人である。
 彼の芭蕉さんも言われている。素直に表現しよう。
 < 雲の峰いくつ崩れて月の山 芭蕉 >。
 たくさん現れた雲のうちに、目鼻を付けたら何かにぴったりの形が
 あった。 何に見えたか分からないが、そんな遊び心が楽しい一句
 である。