15句選 (清韻集・風韻集・同人集・繪硝子集より)  和田 順子選
   

旧盆の白雲淡くゆきにけり      向笠 和子

敗戦のその日灯らぬ烏賊釣り火    北見 さとる

捨つるもの捨て身ほとりの涼あらた  鈴木 万佐子

どこからも見ゆる月山稲の花     佐藤 里秋

星の下つぼみに返る芙蓉かな     梅田 利子

()(づかさ)や山百合の白際立ちぬ      吉藤 とり子

きのふより爽やかけふは俳句の日   小野田 征彦

先生と祇園囃子の中に遭ふ      平 嘉幸

海の日や記憶の中の観艦式      山口 佐喜子

烏瓜咲いて海軍村といふ       吉村 ゑみこ

終戦忌香炉の灰をととのへる     中野 冨美子

夏の雲島見えてより船迅し      吉田 七重

新涼のバカラグラスの水の色     倉橋

子を持たず青桐太く育ちけり     森

美しきものには外すサングラス    鶴切 正子

 
     

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    俳誌「繪硝子」を贈呈いたします。



 選評一句(同人集作品より)

 

   終戦忌香炉の灰をととのへる   中野 冨美子

   昭和20815日を終戦記念日とし、敗戦日、終戦日、終戦忌と
いろいろに詠まれてきた。
   今年は64年目の終戦日であった。けして忘れてはならないこと
  ながら、64年の歳月は、こんなにも象徴的に詠めるようになった。
何もかも灰になった戦争の記憶が、香炉の灰をととのえているとき、
  ふと思い出されたのであろう。香を薫くまでの静かな所作、
  この静かで平和なひとときを得るまでに、随分と時間と努力が
  必要であった。

 
 選評一句(繪硝子集作品より)

 

   子を持たず青桐太く育ちけり   森

 真っ直ぐに伸び、幹も葉も緑の青桐。花も実も付けるが、その美し
く茂った樹を夏の季語としている。 漢詩に詠まれる梧桐(ごどう)
も青桐のことで、季語になったのも近代のことらしい。涼しげな影を
作ることも夏の木である。
 青桐の伸び伸び育つ様子を子どもの成長に重ねることは素直に納得
できる。「子を持たず」に作者の深い気持ちを察するのである。
 気持ちを表現することによって、一段と強くなった作者。