風韻集作品10句   和田 順子選


  せせらぎのせせらぐに冬立ちにけり  向笠 和子

  枯蓮散らかつてゐる干拓田      下鉢 清子

  不意打ちに百年の危機海鼠噛む    北見さとる

  冬の噴水女神の像の高さまで     鈴木喜美恵

  義士の日の丁字屋に灯の入りにけり  藤田 純男

  たまさかの家中早寝初時雨      鈴木万佐子

  古墳百基抱き里山の眠りけり     河合 寿子

  かはたれや霜枯れ時の街静か     小野田征彦

  梟の啼いては闇を測りけり      石澤 青珠

  笹鳴きの城を出ぬのは吾も亦     真塩 裕一
 
   
 
選評一句(同人集作品より)


    水鳥に伸びて来てをり山の影   吉田 七重


 冬の午後、少し冷えてきた山間の池が見えてくる。
「伸びて来てをり」に、これまでの時間の経過が詠めている。
そう多くはない水鳥の姿、池に続く山、静けさなど十分に想像させる。
 分かりやすく、何気なく詠んでいながら、読者に多くのことを語り
かける技を、作者は習得しているようだ。想像力を引き出す言葉選びの
力をみる思いがする。

 
 
 
 選評一句(繪硝子集作品より)

    冬の鵙昃れば山ひくくなり    近藤 れい


 「昃れば山ひくくなり」の独自な発見がよかった。
「昃」という字は「しょく・そく」と読み、午後の日差しを指す。
「ひかげる」と読むのは意味読みである。
 日が傾いて山も影になれば低く感じる。
 沢山の名句の類想を避けて、自分らしい句を作ることに、作者は
 挑戦している。