清韻集・風韻集作品10句   和田 順子選

 堅雪を照らしてゆらぐ絵らうそく    向笠 和子

 尾長鴨妻は綺麗な羽持たず       古島 恒子

 紅梅の一樹ほのぼの師の忌日      鈴木 万佐子

 棟方の女仏ほがらや花菜風       細川 普士子

 梅が香や鎌倉彫の姫鏡         波木井 洋子

 懸想文一声も無く売られをり      久保田 庸子

 魞挿すや今津に通ふ船の水脈      小野田 征彦

 鳴き交はす白鳥に日の傾きぬ      髙平 嘉幸

 大寒の葦あかあかと直訴の碑      石澤 青珠

 大寒の人を浚へり終電車        金山 征以子

   
 
選評一句(同人集作品より)

    寒の雨鈴緒の揺れも無き日かな      原 静枝

 一月五日ごろから立春までの寒は文字通り寒い。 寒雲が立ち込め
雨ともなれば、大気の重さを感じるような寒さである。
 風の吹かない日も多く、神社の鈴の緒もまっすぐに
下がったままである。
 こんな寒い日には、神社を訪れる人もいないということだろうか。
そうではなく、まっすぐに降る寒の雨の静寂を詠んでいるのである。
 寒が伝わってくる。

 
 
 選評一句(繪硝子集作品より)

     燎原の火は知らざるも芝焼けり     藤川 和男

 「燎原の火」は、勢いよく燃え盛る野火であるが、川端 茅舎に
     <燎原の火か筑紫野の菜殻火か>
 の有名な句のあることを思い出させる。
  菜種の殻を焼く火はまさしく燎原の火であったようだ。
 この菜殻火にあこがれた茅舎は九州を訪れ、一連の句で、
 「ホトトギス」の巻頭になっている。
 現在ではほとんど見られない風景であるが、深い一句になった。