清韻集・風韻集・同人集・繪硝子集より作品10句   和田 順子選
   

春雪や母の立ち日をつつしめり   向笠 和子

もう誰も叱ってくれぬ朝寝かな   古島 恒子

春満月もの思ふには明るくて     河合 寿子

雑木山余寒の風の渡りけり     渡部
佳子

列島の反り身を登る花前線     高橋 靖子

憂国の田螺なるべし鳴きにけり   倉橋


たんぽぽやロールケーキを等分に  吉田
玲子

青年の端座や春の写経場      山口 冨美子

花種を蒔いて音なき夜の雨     吉田 七重

初蝶や天保飢饉の供養塔      石澤 敏秀

 
選評一句(同人集作品より)

憂国の田螺なるべし鳴きにけり    倉橋

今の情勢を鑑みて、田螺も国を憂いているのだろうか。 鳴いたようだ。
「鳴きにけり」の断定がたのしい。
 写生道を説く歌人斎藤茂吉に田螺を詠んだ不思議な歌がある。
 <とほき世のかりょうびんがのわたくし児田螺はぬるきみづ恋ひにけり>
この歌の背景を知りたく思っていたら、作者倉橋氏から資料をいただいた。
 いわゆる題詠で詠まれた歌であり、茂吉の歌境の幅広さを伺わせるものと
 わかった。

 
 
 選評一句(繪硝子集作品より)

 

    たんぽぽやロールケーキを等分に   吉田 玲子

  明るい春の一句である。ふわふわのロールケーキ。
 「等分に」ということは、分けられるのを待っている何人もの顔がある。
 子供でも大人でも揃って食べることは喜びに繋がる。
  たんぽぽは、日が差すと開き喜びを満開にしているような花である。
 
日常のささやかなことを俳句にしていくこともまた喜びである。