今月の推薦句 和田順子選(清韻集・風韻集・同人集・繪硝子集より) |
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藤咲けば己やさしくなりゐたり 向笠 和子 置石は安居のかたち竹落葉 下鉢 清子 桐咲くにだんだんひとととほくなる 北見 さとる 花は葉にせりせり鵜舟洗ひをり 藤田 純男 芥子咲くや脳裡はなれぬ一詩人 鈴木 万佐子 山伏の法螺の空耳雪解風 柳田 聖子 舟虫の支離滅裂の逃げつぷり 秦 光枝 ひそと飾る手作り兜子は遠し 宮田 美知子 この町は風が名物鯉のぼり 渡部 桂子 案の定雨の加賀なり橡の花 平 嘉幸 自画像を残し五月を征きしまま 石澤 青珠 鳥雲に秩父の寺は塔持たず 金山 征以子 茄子の花日暮れは家族を待つ心 鈴木 薫子 若葉から白球が来る受けとむる 谷中 淳子 うでぬきの黒きびきびと昭和の日 千葉 喬子 潜き鵜の池の広さを使ひけり 山口 冨美子 春蝉のなき声はうす緑なる 鎌野 光子 御用邸君在らねども松の芯 村上 有秋 万緑やいざ鎌倉と人集ふ 鈴木 靖史
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上掲の作品について、一句鑑賞文をお寄せください。 一句について200字以内、編集部宛てFAX(042-473-3632)にて お送りください。掲載させていただいた場合、俳誌「繪硝子」を 贈呈いたします。 |
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選評一句(同人集作品より) | ||
メーデー歌職を退きたる一闘士 槇 秋生 5月1日は労働者の祭典が盛大に行われていた時期があった。 労働者の要求を掲げてデモ行進、日比谷公園や代々木公園が 赤旗で埋まったことがなつかしい。 「一闘士」に、思いを貫いた潔さが見える。メーデー歌をふと耳にした 時代の元気さの見える句である。
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選評一句(繪硝子集作品より) | ||
雀より小さき鶯コロラチュラ 窪井 衣江 普段余り耳にしない言葉であるが、ここちよく耳に響き リズムよく楽しい一句になっている。 コロラチュラは音楽用語で「コロラトゥーラ・ソプラノ」のこと。 そういえば、「チュンチュン」より「ホーホケキョ・ケキョ」の方が、 声帯はどうなっているのだろう、と作者も感心している。
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