今月の推薦句 和田順子選(清韻集・風韻集・同人集・繪硝子集より)

   
  ひろしま忌吉永小百合の反戦詩            藤田 純男
  鰤起し旅寝の梁の太きかな              柳田 聖子
  柚子黄なり天廣丸(あまのひろまる)狂歌の碑   小野田 征彦
  折鶴の一羽はわたし長崎忌              向笠 千鶴子
  広辞苑の重さ久しき秋の夜               河合 寿子
  荒れ馬を収めて汗を輝かす              久保田 庸子
  八月や満蒙開拓義勇軍                 佐藤 里秋
  しみじみと別れ烏の羽づくろひ             平 嘉幸
  迂回路の鉄板を踏む秋暑かな             石澤 青珠
  穂芒や地球の病んでゐる間にも            山口 佐喜子
  秋もはや魚師なきのちの野辺(のんべ)みち     鈴木 薫子
  夏雲の見よとばかりに容変へ             乗松 とも子
  衛兵の汗の髭もて交替す                千葉 喬子
  樹木葬などの話をして涼し               槇 秋生
  城下町夏の灯淡き虫籠窓                横山 良江
  引潮の沖へ名越の祇園舟               吉田 玲子

 

   上掲の作品について、一句鑑賞文をお寄せください。
  一句について200字以内、編集部宛てFAX(042-473-3632)にて
  お送りください。掲載させていただいた場合、俳誌「繪硝子」を
  贈呈いたします。

 一句選評 (同人集より) 和田順子選
     海賦蒔絵の洲浜清かや夏点前       久保 タツヱ

 茶道の世界を詠んであるので、少し難しいかもしれないが、
日本の文化を知り、句の鑑賞が出来ることも大切ではないだ
ろうか。海賦蒔絵は、海辺の風景を描く蒔絵のこと。
洲浜はその中で曲線の多い浜辺。その浜辺を清々しく感じている。
 蒔絵は、多分棗に施されていて、小さなものだが、
こういう小さなものにも心を止めることが、茶道である。
茶道の作法を「お点前」と言うが、よく「お手前」と
誤記されている。気を付けたいことである。

 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

     水音より新涼の山明けきたり       近藤 れい

 谷川の瀬音だろうか。まず水音が聞こえ、新涼の山が
明けてきたのである。「新涼」は、秋になって知る涼しさであるが、
夏の涼しさと違って爽やかさを感じる。 秋の涼しさは和歌の時代にも詠まれたが、「新涼」の季題は江戸時代からである。
 この句のよさは、「新涼」の本意本情がしっかり捉えられていること
だろう。 本意本情はあまり頼り過ぎると類想に陥りやすいが、
あっさりと詠まれて趣深い。