今月の推薦句 和田順子選(清韻集・風韻集前半より)

淡雪を呼ばふ莬絲子の忌なりけり      下鉢 清子

将門の嬥歌の地なり歯朶萌ゆる       北見 さとる

雪解光田の(かあ)さまを迎へけり        藤田 純男

古池の水際のしめり草萌ゆる        古島 恒子

殉教の風をまとひて麦を踏む        細川 普士子

如月の歯朶青青と崖の道          柳田 聖子

身を鎧ふものを外して春立つ日       向笠 千鶴子

バラモン凧唸る五島の空の碧        宮田 美知子

春めくや傷はひとりで癒ゆるもの      長崎 友子

雪帽子被り無口となりにけり        見田 英子

追難終へ鬼にも届く酒肴          小松 洋子

榛の木の切り株赤し寒明くる        伊村 千代子

堰く水の氷面鏡せる春の雲         杉山 京子

人は老い軒はつららを育てけり       麻耶 紅

初午や日のありながら雲疾き        佐藤 里秋

春雪のしづる音して明けにけり       小野田 征彦

時をりは空を遊弋番鴨           髙平 嘉幸


   上掲の作品について、一句鑑賞文をお寄せください。
  一句について200字以内、編集部宛てFAX(042-473-3632)にて
  お送りください。掲載させていただいた場合、俳誌「繪硝子」を
  贈呈いたします。

 一句選評 (同人集より) 和田順子選

埋め戻す土管太いぞ春の町       槇秋生

 俳句らしい俳句ではないが、眼前の景を生き生きと詠んで春の躍動感

 がある。 町の規模が大きくなって排水の土管が小さくなったのか、

大きな土管に変えて埋め戻している。

 よく見かける工事場の風景だが、土管の太さだけを詠んだところに

新鮮さを
感じた。 春は年度替わりでよく道路工事が行われるが、

これから発展していく
町の元気さも伝えている。

「土管太いぞ」はたのしい把握。

 

 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    


枯蔓の引いても返す力かな      植村紀子

 樹木や垣根に絡まった枯蔓をよく見かける。簡単に引き抜けそうに

思えるが、あちこち絡まってなかなか力がいる。

 この句のよい所は、枯蔓にまだ命があるように「返す力」を捉えて

いることである。 本当は樹木や垣根が押えているのである。

 見たままの直感を表現すること。 理屈や常識なしで感動することの

よい例である。 <雪の峰搾乳の手の休みなく>もよかった。