今月の推薦句 和田順子選(風韻集後半・同人集・繪硝子集より)


  びっしりと春を植ゑ込む花時計      石澤 青珠

麦踏んでリズミカルなるひと日かな    関口 玉枝

玉三郎観に行く日なり春帽子       金山 征以子

なやらひの声は檜山へ杉山へ       鈴木 薫子

地震のあと凝つと見てゐる蝌蚪の水    谷中 淳子

水神へ三月寒き日向道          中野 冨美子

浅春の大炉赫赫煎茶式          森島 弘美

楯持てる最古の埴輪冴返る        倉橋

菜の花や落日挟む船二隻         小林 邦子

大試験靴ひもかたく結びけり       田島 流水

山茱萸の花ひそひそとをんなごゑ     近藤 れい

風花のここに居ぬ人どこにも居らず    鶴切 正子

花種の乾きの中の命かな         久須美 しげ子

老猫も家族のにほひ春炬燵        志村 紗稚


   上掲の作品について、一句鑑賞文をお寄せください。
  一句について200字以内、編集部宛てFAX(042-473-3632)にて
  お送りください。掲載させていただいた場合、俳誌「繪硝子」を
  贈呈いたします。

 一句選評 (同人集より) 和田順子選

    かすかなる風を引きよせ糸柳      清水 美恵子 


   柳は春の季語になっている。 それは芽吹いた若緑の枝垂れが
  
  一斉に風に揺れる様子に、春を感じるからであろう。

  特に枝垂柳は靡きやすい。かすかな風に揺れるのは、柳が風を

  引き寄せている、と作者は感じた。

  大地震のあと、東北に心を寄せる句が多くなった。詠まなくては

  いられない心情である。 詠むことによって浄化される部分もある

  だろうが、一方で平常心を持ち続けることが大事である。

  この景色は何よりの慰めでもある。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    


  
 大地震明けたる朝辛夷咲く        小林 千秋


  311日の東日本大震災は、原子力発電所の事故も重なり、

 その惨状を
共に憂い、何とかしたい気持の日々を送っている。

 今月の句には、この地震を詠んだ句が多かった。

  深刻な事態を皆が真剣に考えている証しでもある。

 このときに俳句など詠んでいられないと、思う人がなかった

ことが何より大事な
ことである。

 大地震という体験を、俳句にするのは大変難しいことである。

客観的に詠んで、
どれだけ気持を込められるか。

この句は淡々と詠んで、咲き始めた辛夷の白い花に救いや祈りを

込めている。 少なくともそのことは分かる。