今月の推薦句 和田順子選(風韻集前半・同人集・繪硝子集より)

 

 木を運ぶ木の船秋の立ちにけり        下鉢 清子

 野馬追の漢の涙見てしまふ          北見 さとる

 亡夫来る盆と信じつ生きて来し        古島 恒子

 今朝の秋いつもどこかで余震なほ       柳田 聖子

 小鳥来るミモレの丈の修道女         向笠 千鶴子

 世界不況水まんぢゅうのたよりなし      宮田 美知子

 謂れある松の龍鱗くすり降る         小松 洋子

 葡萄畑秋立つ風となりにけり         杉山 京子

 法螺貝の木霊言霊青山中           麻耶

 伯父といふレイテの石よ敗戦忌        千葉 喬子

 夕凪の大声出してみたくなり         浜田 嶺子

 補聴器を外して聴けり秋のこゑ        指田 昌江

 抛りたき石が掌にある原爆忌         亀井 孝始

 原爆忌太白星のくれなゐに          珍田 ミヱ子

 向日葵の発電中や未来都市          清水 ひとみ

   上掲の作品について、一句鑑賞文をお寄せください。
  一句について200字以内、編集部宛てFAX(042-473-3632)にて
  お送りください。掲載させていただいた場合、俳誌「繪硝子」を
  贈呈いたします。

 一句選評 (同人集より) 和田順子選

   伯父といふレイテの石よ敗戦忌     千葉 喬子

 なんとも胸を打つ一句である。戦争後期レイテ沖海戦の日本軍の壊滅的

被害はよく知られる。 作者の伯父上は海軍でいらしたので、船と運命を

共にされたのであろう。

 何年か経って、奥様がレイテ島の石を持ってこられて
形見とされて

いると伺った。

 今年は、戦後60年、65年という区切りではないけれど、815日を

ことのほか重く受け取れた。   それは、広島、長崎を含む戦争、

そして福島の
悲劇が当たり前の人間生活にもたらされてはいけないという
                                 思いを改めて
確認したからである。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

   抛りたき石が掌にある原爆忌      亀井 孝始

 8月は、日本人にとって深くものを思う月である。広島忌、長崎忌、

終戦忌を
迎える。そして311日の大震災で亡くなられた方々への鎮魂の

月にもなった。

「抛りたき石が掌にある」は、作者の気持ちを伝えて余りある。

 戦争への怒りか、掌の石がやがて体温で温められて大きな平和を願う

気持となって
いくことを願う。具象を述べていながら、主観を込めて

詠んでいるところが、
力のある一句になった。