今月の推薦句 和田順子選(風韻集前半・同人集・繪硝子集より) |
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木を運ぶ木の船秋の立ちにけり 下鉢 清子 野馬追の漢の涙見てしまふ 北見 さとる 亡夫来る盆と信じつ生きて来し 古島 恒子 今朝の秋いつもどこかで余震なほ 柳田 聖子 小鳥来るミモレの丈の修道女 向笠 千鶴子 世界不況水まんぢゅうのたよりなし 宮田 美知子 謂れある松の龍鱗くすり降る 小松 洋子 葡萄畑秋立つ風となりにけり 杉山 京子 法螺貝の木霊言霊青山中 麻耶 紅 伯父といふレイテの石よ敗戦忌 千葉 喬子 夕凪の大声出してみたくなり 浜田 嶺子 補聴器を外して聴けり秋のこゑ 指田 昌江 抛りたき石が掌にある原爆忌 亀井 孝始 原爆忌太白星のくれなゐに 珍田 ミヱ子 向日葵の発電中や未来都市 清水 ひとみ |
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一句選評 (同人集より) 和田順子選 | ||
伯父といふレイテの石よ敗戦忌 千葉 喬子 なんとも胸を打つ一句である。戦争後期レイテ沖海戦の日本軍の壊滅的 被害はよく知られる。 作者の伯父上は海軍でいらしたので、船と運命を 共にされたのであろう。 今年は、戦後60年、65年という区切りではないけれど、8月15日を ことのほか重く受け取れた。 それは、広島、長崎を含む戦争、 |
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一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選 |
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抛りたき石が掌にある原爆忌 亀井
孝始 8月は、日本人にとって深くものを思う月である。広島忌、長崎忌、 「抛りたき石が掌にある」は、作者の気持ちを伝えて余りある。 戦争への怒りか、掌の石がやがて体温で温められて大きな平和を願う |