今月の推薦句 和田順子選(清韻集・風韻集・同人集・繪硝子集より)



雀蛤となり生家跡空し          向笠 和子

水天は藍を深めて海桐の実        下鉢 清子

九十歳(九十)のなに見えしかと蚯蚓鳴く     北見 さとる

   大 垣

翁忌や蛤塚に立寄りぬ          藤田 純男

沼一つ農夫ひとりの秋ゆやけ       古島 恒子

長き夜の夢こきざみに明けもして     向笠 千鶴子

夕月やスティーブジョブズ氏急逝す    宮田 美知子

落鮎や莬絲子にまさる句は知らず     河合 寿子

山神に先づ餞の初紅葉          久保田 庸子

木の実降る布目瓦の窯の跡        安原 憲子

ふるさとの荷にふるさとの草虱      千葉 喬子

蓑虫に筑波の嶺の晴れわたり       近藤 れい

でんでら野今は大豆の良く育ち      植村 紀子

ラインダンス始まりさうな曼珠沙華    吉田 玲子

遮断機の向かうもひとり後の月      小林 千秋

   上掲の作品について、一句鑑賞文をお寄せください。
  一句について200字以内、編集部宛てFAX(042-473-3632)にて
  お送りください。掲載させていただいた場合、俳誌「繪硝子」を
  贈呈いたします。

 一句選評 (同人集より) 和田順子選

散り頃が見頃となりし萩の花     近藤 れい

 この作者らしい平明な詠み方ながら、萩の花らしいところを捉えて

いる。
ちらほらもよいが、半分はこぼれ散っている方が萩らしい。

「こぼれ萩」「萩の塵」も萩の美しさである。

 萩は万葉集から詠まれている花であるが、これを馬がたべるので、

平安時代には奨励して萩を植え、萩焼きをし、あちこちに萩野が出現

していた。萩は
実になる頃に栄養が多くなるので「萩は実に」も

あながち季節感だけでは
ないようだ。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

でんでら野今は大豆の良く育ち     植村 紀子

 岩手県遠野地方に伝わる一種の姥捨伝説の「でんでら野」。

あの世とこの世の
境にあって、年を取ったら行く場所である。

 作者は岩手の出身なので、「でんでら野」をよく見識っているので

あろう。
 今は大豆がよく育つ地になって本当によかった。