今月の推薦句 和田順子選(清韻集・風韻集・同人集・繪硝子集より)


  武甲山神とし仰ぎ田を打てる      向笠 和子

春愁もなし瀬戸の島照り合うて     下鉢 清子

流氷のオンザロックは立ちて飲む    北見 さとる

菟絲子忌の淡墨櫻雪霏霏と       藤田 純男

月と星冴えきつて地に放射能      古島 恒子

春光や日数ぐすりは気長なる      向笠 千鶴子

春耕や畑のどこかにラジオ鳴り     河合 寿子

江ノ電を途中下車して梅日和      波木井 洋子

凍滝の綻び始む調べかな        久保田 庸子

着ぶくれて吾が身の芯のあやふやに   小松 洋子

草萌や水清ければ魚速し        石澤 敏秀

立春の黄身盛り上がる飯の上      槇 秋生

暁雲の真つ赤に春の立ちにけり     近藤 れい

寒鱈汁一万食のまつりかな       今井

大鍋の湯気立ちあがる鱈まつり     今井

冬の夜の家に動かぬ影ばかり      斉藤 依子

手首とはよく撓ふもの針供養      小林 千秋

   
     上掲の作品について、一句鑑賞文をお寄せください。
    一句について200字以内、編集部宛てFAX(042-473-3632)
    にてお送りください。掲載させていただいた場合、
    俳誌「繪硝子」を贈呈いたします。

 一句選評 (同人集より) 和田順子選

草萌や水清ければ魚速し      石澤 敏秀

   「水清ければ魚棲まず」の慣用句を踏まえて詠んである。

   水がきれいに澄んでいる所では、餌もなく魚が住み難い

   と言われる。そんなことは無いと作者も思っている。

   清流にこそ住む魚を私たちはたくさん見ている。

   「水清ければ魚速し」が、実際の風景であろう。

   また、「水清ければ魚棲まず」は、孔子の言葉として

   伝えられるもので日本の自然とは合わない。

   知識や他人の表現に左右されず、己の見たものを信ずる

   方法で俳句を作ろう。

 

 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

寒鱈汁一万食のまつりかな       今井

大鍋の湯気立ちあがる鱈まつり     今井

  山形県の庄内地方に「どんがら汁」という郷土料理がある。

  寒に美味しくなる鱈のぶつ切りと野菜、豆腐などを煮込んだ

   鱈汁で、これを食べに東京から出掛ける
人の話を聞いた。

   一度は食べたいと思わせる話し振りであった。

「一万食」と言い、「湯気立ちあがる」情景と言い、雪の中の

寒さもよい味付けになったであろう。

津波を免れた東北の日本海側は、大雪に閉じ込められているが、

自然を相手によい句が寄せられて嬉しい。