今月の推薦句  和田順子選(清韻集・風韻集前半・同人集・
                         繪硝子集より)

 
 房州の蚕豆恋し真砂女また       向笠
和子

 莬絲子の忌過ぎたる雨の音なりき    下鉢 清子

 終止符は野へ置きざりに百千鳥     北見さとる

 神あそぶ能郷の奥の春田かな      藤田 純男

 庭桜独りに慣れてしまひけり      古島 恒子

 淡墨桜とけ会ふ空のうす墨に      柳田 聖子

 千鳥淵花よぶ雨となりにけり     向笠 千鶴子

 淡墨桜先師を深く思ふけふ       河合 寿子

 石庭の石の吐息や夕桜         波木井 洋子

 雪解川力抜くこと覚えたり       見田 英子

 四月馬鹿ピエロの顔の描き涙      小松 洋子

 十町歩植ゑし昔や杉の花        佐藤 里秋

 筍をだれが責めやうすくすくと     森 八重子

 発電風車とほく豊けき春の海      倉橋

 啄木忌寒暖の差の昨日今日       石澤 敏秀

 春霞練習艇の白帆かな         吉田 玲子

 水切りに興じて花の真つ盛り      浅岡 えい子

 発声のアイウエオアオ青き踏む     金子 冨美子


   
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 一句選評 (同人集より) 和田順子選

     筍をだれが責めやうすくすくと     森八重子

  筍は初夏の味わい。 皆が待っている食材である。

  竹の地下茎から出る新芽が竹の子であるが、成長が速いので

  頭が出るか出ないうちに掘りあげられる。 ところが、今年、

  原発から遠く離れた千葉県産の筍が、放射能の基準値を超えて

  出荷停止になった。

 掘り上げることが出来なくなった筍が、すくすくと育っている。

  東日本大震災から一年以上経って、こんな句を読まなければならない

  のは悲しい


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

     春霞練習艇の白帆かな         吉田玲子

  霞の立つ穏やかな春の海に、ヨット部だろうか、海上自衛隊の訓練艇

  だろうか、帆を張った舟が多く出ている。

  湘南の海ではよく見掛けるのどかな風景である。

  霞は春の季語だから、春霞と言わなくともよいのではと指摘
  
  されるが、
霞は古来「()らう」と言い、空気中に水蒸気が多い

  状態
  霞は春にも秋にも歌われていた。 霞が春、霧が秋と

  区別されるように
なったのは、近世である。

  春霞はごく自然な使われかたである。