今月の推薦句 和田順子選(風韻集後半・同人集・繪硝子集より)

 顔上げてエレベーターを待つ薄暑       小野田 征彦

 のどけしや餅搗きといふ道祖神        平 嘉幸

 それ以上乗り出すまいぞ燕の子        石澤 青珠

 郭公の声にあけたり朝の月          関口 玉枝

 釈迦牟尼の不思議な笑みや風薫る       金山 征以子

 一家言聞きつ味増す夏料理          真塩 裕一

 草笛を教へる一人吹く一人          吉村 ゑみこ

 新緑や雫に色を移したる           丹野 義子

 たんぽぽのわた吹き反抗期も過ぎし      谷中 淳子

 児篠の風のやさしさ曽我の墓         中野 冨美子

 花は実に記憶の違ふ姉いもと         吉田 七重

 山椒魚大口開けば真珠色           倉橋

 ゴールデンウイーク預かっている小鳥籠    槇 秋生

 筆圧の強き字憲法記念の日          小林 千秋

 新緑や日ごとに山の近くなる         長田 竹風


   
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 一句選評 (同人集より) 和田順子選

    山椒魚大口開けば真珠色      倉橋

 山椒魚には種類も多く大山椒魚は天然記念物である。

「大口開けば」とあるので大山椒魚であろうか。

山椒魚の口の中は、その外見と違ってきれいな真珠色を

していた。 この発見が手柄である。

普段は渓流の底の色に紛れているが、なんと美しい色を

秘めているのだろう。生きものの不思議、ともすれば嫌われ

がちな山椒魚への優しいまなざしが感じられる。 

私たちは知識や先入観を捨てて、俳句を詠まなければならない。

 

 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選
 
   

    筆圧の強き字憲法記念の日     小林 千秋

 憲法記念の日は53日。日本が敗戦を迎えたのが昭和20

815日、新しい憲法の公布が21113日、実施されるのが

2253日。民主国家への生まれ変わりは早かった。

 俳句で表せる17文字のうち、季語の「憲法記念の日」だけで

9文字使っている。あと8文字で何が言えるか。

 よく言われることに「短歌は情を、漢詩はこころざしを、

俳句は景を述べるもの」。「景」は景色であり、ありさまである。

「筆圧の強き字」は、そのままで何と雄弁なことか。