今月の推薦句 和田順子選(風韻集・同人集・繪硝子集より)


菊作り幼馴染みのまま老いて      向笠 和子

武蔵野の枯れの明るし師弟句碑     下鉢 清子

冬ざれや島に厨子王安寿の碑      北見 さとる

梟の眼玉を見上ぐ昼の森        古島 恒子

庫裡跡に蕎麦の干されて深大寺     柳田 聖子

穭穂を啄む雀広報車          吉藤 とり子

黄落やだんだん激し護摩太鼓      石澤 青珠

枯すすき夕日まぶしく沼に入る     関口 玉枝

空の青奏でさうなる枯芙蓉       中島 和子

深緑の野草の揺れも月の供華      真塩 裕一

賑はいの隅に猫ゐる一の酉       金田 美穂

猫の眼の風の穂草の中にあり      谷中 淳子

穏やかな日和むかごのよくこぼれ    田島 昭代

夜神楽となり幔幕の風止みぬ      石澤 敏秀

市役所の朱肉のくぼみ文化の日     田島 柳水

富士遠く望む墓域や風鶴忌       槇 秋生

眼裏に黒の残像冬落暉         宮原 圭子

秋の夜や畑の道具に油差し       久保田 房子

仰ぎ見ること忘れゐし花柊       上杉 和恵

懐手の波郷逢いたし叱られたし     金子 富美子

   
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 一句選評 (同人集より) 和田順子選

 夜神楽となり幔幕の風止みぬ     石澤 敏秀

夜神楽として有名な高千穂神楽は一夜を明かし、翌日の昼ごろまで

舞うが、各地の神事神楽はそう長くはない。  夜神楽となる前に、

祝詞を読み上げたりお祓いをしたりの神事がある。そして神楽が始まる。

広前に張られ風に揺れていた幕も、神楽の始まるころには静まって

よい雰囲気である。

奥会津の鄙の夜神楽を見たことがある。鬼に噛まれると良いことが

あったり、口におひねりを入れたり楽しいものであった。

 

 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

  眼裏に黒の残像冬落暉      宮原圭子

斬新な切込みが無機質な景色の広がりを見せている。

夕日が遠くに沈む時、眼前の建物は黒い影ばかりに見える。

目裏に黒い影を残して冬の赤い夕日が落ちてゆく。

落日の感傷を何も語ってないが、天体運行の素晴らしい現象に会えば、

人間は感動を享けるだろう。

動詞や形容詞が使われていないことも、すっきりしている。