今月の推薦句 和田順子選(風韻集前半・同人集・繪硝子集より)


立春の落ちゆく月のおそしおそし      向笠 和子

小鳥引く前方後円墳の空         下鉢 清子

風花やをんなの囲む飛鳥鍋        北見 さとる

余寒なほ下呂の田の神まつりかな     藤田 純男

雪折れの木木そのままに春立てり     宮田 美知子

一枚の岩に広がり春の水         波木井 洋子

晴天の冬芽見上げて八十歳        久保田 庸子

繭玉や人の立ち居に風うまれ       井村 千代子

踏むまじき箒目ありぬ春の宮       杉山 京子

日本語のきれいな神父春の婚       渡部 桂子

下京の雨も明るし春立つ日        小野田 征彦

わが庭の梅まだ固き多喜二の忌      平 嘉幸

春の鷺思ひ出しては歩みけり       石澤 青珠

室咲や誰かがやつて来さうな日      中島 和子

梅開く日差しに父の歩の確か       古賀 幹子

等伯の松蒼蒼と春寒し          吉村 ゑみこ

サイネリア食後の眠気許さるる      金田 美穂

母に炊く粥ふつくらと雨水かな      谷中 淳子

美しき春の菱垣芙美子邸         原 靜枝

成満の荒行僧や梅白し          齋藤 直子

風花の風を残してゆきにけり       近藤 れい

三仏寺崖のつららの中にあり       森

三寒四温テーブルは丸が良し       田島 柳水

雪霏霏と葬列やがて失せにけり      今井

朝刊めくる音ストーブの燃焼音      村井 照子

加湿器の噴き出す進路相談室       金子 ふみ子

   
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 一句選評 (同人集より) 和田順子選

成満の荒行僧や梅白し       齋藤直子

成満は成満会(じょうまんえ)とも言い、日蓮宗の荒行を

終えた僧たちの法会である。厳しい行に命を落とすものもあると

聞くだけに、無事終えた安堵はいかばかりであろう。

読経はまだ寒い天地をゆるがせたに違いない。

「梅白し」が凛として荒行を終えた僧の心映えのようである。

珍しいものを見たり体験したりするとどうしても親切に丁寧に

教えたくなる。簡潔に詠むことの難しさがある。

この句は簡潔にしてよく分かる。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

 

雪霏霏と葬列やがて失せにけり     今井眞

映画のラストシーンのような美しくも悲しい一句である。

作者は山形に暮らすので、車の通れないところではこういう

葬列もあるだろう。