今月の推薦句 和田順子選(風韻集後半・同人集・繪硝子集より)


琴の上に琴柱の影や雛の日      向笠 和子

鴨引きて沼の面目あらたまる     下鉢 清子

をちこちへ言葉見舞や日脚伸ぶ    北見 さとる

かたかごや飯尾宗祇の庵のあと    藤田 純男

針魚干す風の呼び込む海の色     小松 洋子

三寒の立蹲やしんと寺        杉山 京子

啄木忌風紋といふ(はか)無事( な ごと)       石澤 青珠

春浅し峠の風の平手打ち       鈴木 薫子

子の帰る家別にあり鳥雲に      金田 美穂

お中日しばし生家の庭歩き      吉田 七重

春一番大路を走るスポーツ紙     千葉 喬子

平成の世に軍手あり春の土      村上 コ男

花堤影差し掛かる飛行船       石澤 敏秀

忌に帰る吉備の山川鰆東風      安原 憲子

御殿雛うしろの闇の深さかな     斎藤 依子

春陰や洋酒の眠る壜並び       山田 洋子

春暁や形あるものから覚めて     亀井 孝始

菜の花やサイクリングの完走証    吉田 玲子

妹はいまも妹桜餅          小林 千秋

桃の日の正午の汽笛輪を描き     渋谷 乃里子

   
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 一句選評 (同人集より) 和田順子選

春一番大路を走るスポーツ紙    千葉喬子

即座に情景が見えてくる。春一番は季節の区切りのように

皆に待たれて歓迎されている季語である。

そんな風の吹いた日に、ファンの読み終えたスポーツ新聞が

大路を吹かれ飛んでいる。

手柄は「大路を走る」の表現である。

風に吹かれて飛んでいる所迄は誰にも詠めるが、走ると言った

ことで、スポーツ記者が取材に走り回っているように想像が働く。

旨い表現だと思う。



 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選 

   

御殿雛うしろの闇の深さかな    斎藤依子

御殿雛は内裏雛の立派な段飾りを思うが、もしかして藩主の家に

飾られ続けてきたお雛様であるかもしれない。

長押に届くような豪華な雛段の後ろが暗いことを発見している。

前面の輝かしさと、後ろの暗さは雛が見てきた歴史を象徴して

いるのかも知れない。

作者が山形なので、何か「おしん」の世界を想像させる。