今月の推薦句 和田順子選(清韻集・風韻集・同人集・繪硝子集より)


雨のまま暮れてしまひぬライラック    下鉢 清子

百千鳥古今伝授と呼ぶ里に        藤田 純男

サッチャー女史逝けりたちまち春疾風   宮田 美知子

川舟の櫓をねかせおく春の岸       波木井 洋子

人思ふ歩幅となりぬ梅の苑        見田 英子

さしのぼる水陽炎や榛の花        高平 嘉幸

菜の花や上総興津の長停車        石澤 青珠

日の当たりゐてきらきらと春時雨     中島 和子

春の雨果たして甘いやもしれず      金田 美穂

猫の恋夜はわたしの眼が光る       谷中 淳子

染め散らす花は学徒の慰霊碑に      中野 冨美子

土浴びて鶏が留守居やぐみの花      田島 昭代

雲白し欅若葉の不安定          森島 弘美

菜種梅雨家のどこかが整理され      原  靜枝

踊り出す郡上の空の鯉のぼり       千葉 喬子

郡上小路桶にひたして売る蕨       山口 冨美子

蜥蜴出で新刊書籍山積みに        田島 柳水

歌舞伎座の瓦の座紋風光る        小林 邦子

のどけしや湯煙あげて塩工房       今井  眞

囀や駅弁の紐まくなゐ          小林 千秋

待たれをり会津五桜八重桜        金子 ふみ子

幾万の南無阿弥陀仏桜ちる        守住 京子


   
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 一句選評 (同人集より) 和田順子選

踊り出す郡上の空の鯉のぼり    千葉 喬子

岐阜県の郡上八幡は「郡上踊り」で有名である。毎年七月

上旬から三か月続く盆踊り。八月のお盆の三日間は徹夜踊りで、

街中に踊り下駄の音が響く。

四月の東海支部吟行会は郡上の町並みや古今伝授の里を

訪ねる旅であった。

鯉のぼりは普通「泳ぐ」と言う表現で処理されるが、この

句は「踊り出す」と詠んで郡上らしさを強調して面白い。



 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

のどけしや湯煙あげて塩工房    今井  眞

塩づくりの風景である。塩田にしろ藻塩にしろ最後は塩水を

煮詰め結晶を採る作業がある。豊かな水蒸気を上げている塩工房。

大規模な製塩場でないところが長閑である。

待ちわびていた春の光が差し渡って、ゆったり穏やかな気分になる。

日本人の繊細な感受性であると思う。