今月の推薦句 和田順子選(清韻集・風韻集・同人集・繪硝子集より)


河馬が浮く秋の深まりゆく上野      下鉢 清子

ながらへて子の味となる菊膾       北見 さとる

秋夕焼人を拒みし親不知         藤田 純男

づつしりと十三回忌ざくろ実に      向笠 千鶴子

右に萩左にも萩石畳           波木井 洋子

天神さまの細道隠し初雪来        見田 英子

昭和はや身近なむかし鵙鳴けり      小松 洋子

縄文の女神に触るる風のいろ       麻耶 紅     

故郷やとんぼが顔に突き当り       梅田 利子

月光の届く鍵穴一人住む         岩田 洋子

校歌とは歌ひ継ぐうた稲を刈る      小野田 征彦   

八千草に濡れ子規庵を辞しにけり     平 嘉幸

紅白の萩散らすまま宝戒寺        古賀 幹子

藪枯らし抜くべし想ひ絶やすべし     谷中 淳子

子の獅子に笛吹く父や秋祭        田島 昭代

ひさびさに可惜夜となる今日の月     吉本 紀代

烏瓜取れぬ高さに守られて        原 靜枝

天高しきりん顔から歩み出す       千葉 喬子

ツイードの(さら)のジャケット赤い羽根     槇 秋生

鰯雲江ノ島つれて流れけり        嶋村 恵子

クレヨンの木に来る小鳥白秋忌      亀井 孝始

色変へぬ松や長寿の親に生れ       宮原 さくら

脛出して跳ねる行司や前相撲       吉本 安良


     上掲の作品について、一句鑑賞文をお寄せください。
    一句について200字以内、編集部宛てFAX(042-473-3632)
    にてお送りください。掲載させていただいた場合、
    俳誌「繪硝子」を贈呈いたします。

 一句選評 (同人集より) 和田順子選

天高しきりん顔から歩み出す     千葉喬子

全句動物園の嘱目吟である。一日動物と親しんだようである。

初心の驚きの目を持って動物たちを眺め、新鮮な句が詠めた。

足から歩みだす、と言うのが自然な表現だが「顔から歩み出す」は、

いかにも長身のきりんの動作。

抜けるような青空のもとしばし童心に帰る。秋の夜の沈思黙考も

いいがこの解放感も良い。

 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

クレヨンの木に来る小鳥白秋忌     亀井孝始

北原白秋の忌日は十一月二日。この句は白秋忌を季語としている。

詩人であり歌人である白秋は、たくさんの童謡も残している。

クレヨンで描かれた木には、小鳥が飛んで来て止まろうとしている。

絵の中の小鳥かもしれないが、本当の小鳥かもしれない。

そんな夢のある風景を詠んで、いかにも北原白秋の童謡の世界。