今月の推薦句 和田順子選(清韻集・風韻集・同人集・繪硝子集より)


転生を考へてゐる月夜かな       北見 さとる

水旨き天領飛騨の新走         藤田 純男

霧流れいぶきとらのを濡れてゐし    古島 恒子

霜月や何時癒ゆるとも癒えぬとも    向笠 千鶴子

大いちやう黄葉づる矢立初めの碑    河合 寿子

桟橋の突端海濃し冬日濃し       久保田 庸子

酒蔵にから傘二本冬に入る       小野田 征彦

わが余生いよいよ愉し小鳥来る     高平 嘉幸

ゲーテ座を坂の半ばに時雨れけり    石澤 青珠

朝刊の意外な重さ草雲雀        金山 征以子

夕日燦南の島の感謝祭         古賀 幹子

地下室に響くサウンド冬薔薇      吉村 ゑみこ

乗換への時間たつぷり豊の秋      金田 美穂

ホットケーキよろこばせるがよろこびで 谷中 淳子

運上所跡県庁に冬紅葉         森島 弘美

日溜りのどこにも雀小春凪       吉田 七重

峠とはふりかへる処霧の渓       永見 るり草

ボジョレヌーボ妻にささやかなる年金  槇  秋生

林火碑に汽笛また鳴る花八つ手     近藤 れい

湯豆腐の力抜きたる揺れ具合      清水 ひとみ

野分晴消防自動車総点検        渋谷 乃里子

白菜の外葉透かせる夕日かな      田中 虹二

馬車道の水場の跡や蔦紅葉       鈴木 勢津子

黄落やたいめい軒の銀の匙       松岡 洋太


     上掲の作品について、一句鑑賞文をお寄せください。
    一句について200字以内、編集部宛てFAX(042-473-3632)
    にてお送りください。掲載させていただいた場合、
    俳誌「繪硝子」を贈呈いたします。

 一句選評 (同人集より) 和田順子選

   ボジョレヌーボ―妻にささやかなる年金  槇 秋生

ボージョレー・ヌーボーはフランスのボージョレー地方産の

葡萄酒の新酒。出荷解禁日がフランス政府によって十一月

第三木曜日午前零時と決められている。

なぜか分からないが付加価値が付いて日本でも大騒ぎである。

華やかなラベルの赤ワインはそれだけで嬉しい。

年季ものと言いながら、この日だけは新酒を味わって喜ぶ。

もう一つ嬉しいことがあった。「妻にささやかなる年金」である。

奥様をねぎらい感謝されたことだろう。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

   野分晴消防自動車総点検      渋谷 乃里子

野分が去った真っ青な秋の青空、その下で真っ赤な消防自動車の

総点検である。色鮮やかな開放感のある情景。

近くの消防署でよく見かけ、類想があるかも知れないが、漢字ばかりを

使い、よく端的に纏められた。

 作者の今月の句は、どの句を取り上げてもよかったのだが、読者に

鮮やかな印象を残すこの句を取り上げた。伝え方の工夫も大切である。