今月の推薦句 和田順子選(清韻集・風韻集・同人集・繪硝子集より)

  奥祖谷の隠田集落冬構へ        下鉢 清子

哭くためのマスクとなつてしまひけり  北見 さとる

年迎へ飛騨鰤市のはじまれり      藤田 純男

ほのぼのと大内山の冬ざくら      河合 寿子

寒林の谷へ垂れたるごとき道      波木井 洋子

親切な他人となりて看取る冬      摩耶

遷宮や千木鰹木の冴え冴えと      梅田 利子

大鷲の眼引き寄す望遠鏡        岩田 洋子

十二月八日大内山にのぼりけり     平 嘉幸

ゆるゆると夏目坂とは小春坂      石澤 青珠

雪吊の縄のハープを弾くは風      関口 玉枝

紅色の貝の釦や賞与月         谷中 淳子

足場解く金属音や年つまる       吉本 紀代

緞帳の下ろさるるごと冬夕焼      志村 紗稚

冬日浴ぶ太陽の塔の大きな目      小林 邦子

枇杷の花近づくときに華やげり     安原 則子

仲見世に七味を買うて納め句座     石澤 敏秀

菰巻のされたる木より眠くなり     亀井 孝始

日向ぼこイグアナめくよじつとして   堀 美和子

あのままに終りし恋の毛糸玉      西浦 すみ恵

十二月八日の硬き靴の音        原田 貴志子


     上掲の作品について、一句鑑賞文をお寄せください。
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    にてお送りください。掲載させていただいた場合、
    俳誌「繪硝子」を贈呈いたします。

 一句選評 (同人集より) 和田順子選

緞帳の下ろさるるごと冬夕焼      志村 紗稚

 冬夕焼けの見事な景色を詠んである。 緞帳は舞台の一番前に

下げられる鮮やかな刺繍を施した垂れ幕。 緞帳を眺めながら、

開幕を楽しみに待つ。

 夕焼けの美しさを「緞帳の下ろさるる」と表現した句は初めて

だし、比喩として肯える。季節が春や夏ではこの比喩が生かされない。

 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

日向ぼこイグアナめくよじつとして   堀 美和子

イグアナは近ごろペットとしても飼われているらしい。黄緑色の

樹上にすむ蜥蜴。大きくなるが動作が緩慢なので何かユーモラスである。

日向ぼっこの姿を「イグアナめくよ」と比喩したところが面白い。

作者が瞬間に閃いた言葉かもしれないが、類想がなく新鮮な

面白さが出た。旨い表現を記憶に留めることも大切だが、

自分の感性を信用しよう。