今月の推薦句 和田順子選(清韻集・風韻集・同人集・繪硝子集より)


凩の吹き回りたり桑の瘤       下鉢 清子

砂金選る山は時雨れて来たりけり   北見 さとる

鬼芒人形峠越えにけり        藤田 純男

行く秋の浮世絵行灯まつりかな    柳田 聖子

小狸や代官山の杜にふと       向笠 千鶴子

お供米の稲刈る万葉植物園      河合 寿子

障子あく結界解きし如くなり     波木井 洋子

姥ヶ池睡蓮一花返り咲き       吉藤 とり子

角切られ丸腰のごと奈良の鹿     岩田 洋子

藤原三代の裔かも知れず小豆干す   平 嘉幸

いや赤し十一月の鳩の足       石澤 青珠

熱燗やたちまち土佐の顔となる    金山 征以子

中世の墜道古りし小鳥来る      古賀 幹子

母にいふ最後のおはやう富士に雪   谷中 淳子

音たてて爆ぜる藤の実波郷の忌    田島 昭代

追分の風に細るや掛大根       原 靜枝

師走くるおのおのがたの動き急    野 ふよ子

しぐるるや小手指が原古戦の碑    倉橋

柿の木に夕日十一月の行く      槇 秋生

北颪もう吹く頃ぞ故郷は       石澤 敏秀

身に入むや黒きマリアに跪き     今井

日向ぼこ猿の背中の揃ひけり     嶋村 恵子

七五三このごろの富士よかりけり   松岡 洋太

明日雨の予報や菊のよく匂ふ     原田 貴志子

新しき朱肉に替へて文化の日     珍田 ミヱ子

結界の今朝は外され菊日和      安居院 敏子


     上掲の作品について、一句鑑賞文をお寄せください。
    一句について200字以内、編集部宛てFAX(042-473-3632)
    にてお送りください。掲載させていただいた場合、
    俳誌「繪硝子」を贈呈いたします。



 一句選評 (同人集より) 和田順子選

北颪もう吹く頃ぞ故郷は     石澤 敏秀

作者の故郷は群馬県と伺った。栃木県も群馬県も関東地方の

内陸県で、冬には乾燥した寒い風が吹き荒れる。

周りの山々から盆地めがけて吹き下ろす風を颪と言って、

もう逃れようもない寒さは、懐かしい故郷そのものである。

東京に凩が吹いて、故郷にも北颪が吹く頃と、その情景と共に

思い出している。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

明日雨の予報や菊のよく匂ふ   原田 貴志子

日常の何気ない発見を、しっかりした情緒の中に静かに詠んで

心を打つ。明日は雨になりそうな湿度の高い日には匂いも籠って

菊もよく香るのであろう。

作者は「ふうの木」会員で、熱心に私の言葉を聞きとって下さり、

今月の六句の中にその勉強の跡が見える。

熟語や比喩をなるべく避けて自分の言葉で表現する。

写生の中に主観を表現する。すでに句集を出された方と伺うが

見事に意向を汲んで下さった。