今月の推薦句 和田順子選(清韻集・風韻集・同人集・繪硝子集より)

 若菜摘む真似事せむと外に出づる     向笠 和子

 梟が鳴くと思へば鳴きにけり       下鉢 清子

 ぽつぺん吹く金輪際の憂き世なる     北見 さとる

 雪けつて飛騨高山の出初式        藤田 純男

 祝ぎごとの報せ重なり実千両       柳田 聖子

 さびしさの数と思ひぬ冬ざくら      河合 寿子

 照れば金日かげれば銀芒原        波木井 洋子

 剥製の鷹の淑気や武家屋敷        見田 英子

 燻ぶれる薪の炎となる憂国忌       小松 洋子

 過去の事ばかり膨らむ初山河       梅田 利子

 淑気満つ樟千年の突兀と         平 嘉幸

 冬鷺の考へ抜きし一歩かな        石澤 青珠

 枯菊を刈らむと思ひつつけふも      鈴木 薫子

 熱の子に姉が作りぬ雪兎         吉村 ゑみこ

 冬の日のあつまつてゐる銀の匙      谷中 淳子

 朔旦冬至湯あみの命ながらへる      中野 冨美子

 元旦の少年靴を揃へをり         田島 昭代

 列車音枯野過ぐとき緩やかに       吉田 七重

 ポストまでほんのそこまで着ぶくれて   吉本 紀代

 たのしげな声が近くに福寿草       原 靜枝

 初漁の江戸前海苔のこむらさき      向笠 千縁子

 いつも歩をとどむるところ冬苺      永見 るり草

 つややかな練馬大根努力賞        久保 タツヱ

 宿根木の路地の屋号や石蕗の花      小林 邦子

 散髪の熱きタオルや松の内        倉橋

 春待つや石に彫りたる貝のうた      槇秋生

 行幸の碑に出合ひけり探梅行       石澤 敏秀

 凍つる夜や辞書の全文字眠らせて     村上 コ男

 新年や平和保ちて七十年         嶋村 恵子

 去年今年ひたすらに波新しく       渋谷 乃里子

 初場所や行司だまりに塩の降る      吉本 安良

 大蛇舞ふ石見神楽に引き込まれ      小松田 純子


     上掲の作品について、一句鑑賞文をお寄せください。
    一句について200字以内、編集部宛てFAX(042-473-3632)
    にてお送りください。掲載させていただいた場合、
    俳誌「繪硝子」を贈呈いたします。


 一句選評 (同人集より) 和田順子選

    行幸の碑に出合ひけり探梅行     石澤 敏秀

  早咲きの梅を探して野山を歩く探梅行。思いがけぬ所に野梅が

 咲いていて心の弾む散策である。

 出会いの楽しみは梅ばかりではなかった。行幸の碑にまみえる。

 行幸は天皇のお出かけ。狩や探梅であったかもしれない。

 時代が下がれば、行幸はその土地を訪れ励ます目的になったが、

 長閑な遠山の行幸と思いたい。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

    去年今年ひたすらに波新しく     渋谷乃里子

 「ひたすらに波新しく」と捉えている作者の思いが屹然としていて

 素晴らしい。陸と海との境、そこへ寄せてくる波はのたりのたりと

繰り返しているのかもしれないが、どの波も新しいと感じることが、

年を迎えるに当たっての気分の高まりとなっている。

写真で撮れば同じ波でも、それを見ている人の心が俳句にしている

のであろう。