今月の推薦句 和田順子選(清韻集・風韻集・同人集・繪硝子集より)


蒼穹も見ず八十八夜昏る      向笠 和子

花あさざ一枚岩を水走り      下鉢 清子

追伸に朱鷺の巣立ちを見守ると   北見 さとる

柿若葉松坂木綿問屋かな      藤田 純男

雁風呂やうすくれなゐの空残り   柳田 聖子

青葉光五時のチャイムは明るくて  向笠 千鶴子

散るさくらいではの人と仰ぐけふ  河合 寿子

将門の嬥歌の地なり田芹摘む    小松 洋子

南総の山を黄金に若葉風      梅田 利子

本郷の薄暮を歩む啄木忌      石澤 青珠

このごろの黄昏永し枇杷熟るる   谷中 淳子

多摩川に鮎の遡上や瀬に光る    中野 冨美子

安養院山芍薬の白さかな      森島 弘美

舫ひ舟ときにふれ合ふ夕薄暑    吉本 紀代

奥日光氷室の扉より山気かな    向笠 千縁子

雁風呂や北へ行くひと帰るひと   同

春疾風去り逝くものの矢継ぎ早   倉橋

若葉冷灯の入り初めしスタジアム  槇 秋生

囀やサブレ―の鳩箱を出て     今井

(たん)茶前(ちゃめ)や酔うて楽しき島の夏    大石 良雄

詩酒に富むのど仏なり更衣     金子 ふみ子

風薫る島に慰霊の両陛下      酒向 節子

友見舞ふ枇杷と昔をぶらさげて   原田 貴志子

夏立つや若冲描く白き象      吉川 幸子

沈む日は桜に色を残し行く     吉本 安良

アスファルトの輝き白し薄暑光   堀 美和子

スポーツカーの耀く真つ赤夏来る  宮原 さくら


     上掲の作品について、一句鑑賞文をお寄せください。
    一句について200字以内、編集部宛てFAX(042-473-3632)
    にてお送りください。掲載させていただいた場合、
    俳誌「繪硝子」を贈呈いたします。



 一句選評 (同人集より) 和田順子選

囀やサブレ―の鳩箱を出て   今井

  誰もが知っている鳩サブレーは素朴な鳩の形をしている。

 箱から出したサブレーが鳴いたようにも取れて、何気ない

ことを上手に詠めている。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

風薫る島に慰霊の両陛下    酒向 節子

  417日、天皇皇后両陛下はパラオへの慰霊の旅を

 された。今次大戦で激戦地となったパラオ・ペリリュー島

 へ向けて献花されるお姿を拝見した。

日本より南なので4月であっても「風薫る」初夏の気候

なのであろう。

 戦後70年、私たちも心安らぐ出来事として記憶にとどめる

ことができた。すがすがしい風も吹いていたようだ。