今月の推薦句 和田順子選(清韻集・風韻集・同人集・繪硝子集より)


 溝蕎麦が咲き出す千住町はづれ     下鉢 清子

 遺されし慰問袋に蚊取香        北見 さとる

 涼あらた国宝彦根屏風展        藤田 純男

 大文字極楽浄土の風立てり       柳田 聖子

 新涼や八十八の扉あけ         向笠 千鶴子

 屋根に梅干して家中寝しづまる     波木井 洋子

 聖堂の鐘の音送る麦の風        小松 洋子

 溢れ蚊を風と入れたり厨口       小野田 征彦

 ロザリオの熔けて伝ふる長崎忌     石澤 青珠

 祈るとは忘れざること夾竹桃      金山 征以子

 穂孕みの稲田や月山晴れわたる     吉村 ゑみこ

 秋晴や追はるる用もなき日なり     田島 昭代

 狼が檻に穴掘る秋暑かな        倉橋

 新涼や花を挿さずにある白磁      槇 秋生

 よみがえる被爆電車に乗りて秋     大石 良雄

 一番星待たせてからすうりの花     千葉 喬子

 東京駅へ電車あつまる大暑かな     松岡 洋太

 星月夜オンザロックの溶くる音     石関 双葉

 盆過ぎの淋しき畳膝小僧        宮原 さくら

 旱月赤く大きく夕爾の忌        渋谷 乃里子

名文の終戦詔書敗戦日         山田 洋子

 夏霧の距離を失ひ呼び合へり      横内 節子

 齧り付くやうに口付け山清水      清水 善和


     上掲の作品について、一句鑑賞文をお寄せください。
    一句について200字以内、編集部宛てFAX(042-473-3632)
    にてお送りください。掲載させていただいた場合、
    俳誌「繪硝子」を贈呈いたします。



 一句選評 (同人集より) 和田順子選

   よみがえる被爆電車に乗りて秋    大石 良雄

 広島に原爆が投下されたとき市内を走っていた路面電車も被爆した。

 そして輸送手段としてまず復旧したのも路面電車であった。

 今年原爆投下七十年、往時の路面電車をよみがえらせて、

 被爆者を招待したイベントがあったようだ。作者の夫人にも

 招待状が届き、亡き夫人に替りご子息が乗ってこられた。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

   星月夜オンザロックの溶くる音    石関 双葉

 月の字が入っているが「星月夜」は、月の出ていない秋の

 澄んだ夜空に星が月夜のように明るいこと。

 素敵な言葉である。

 氷の塊の上にウイスキーなどを注いで飲むオンザロック。

 グラスの中で氷の溶ける音がことりと響く静かな夜、

 大人の時間である。