今月の推薦句 

和田順子選(清韻集・風韻集・同人集・繪硝子集より)


秋の蝶わが深呼吸のいづくより    向笠 和子

秋落暉吉野へつづく芋峠       藤田 純男

若宮大路追ひかけてくる秋の雷    柳田 聖子

爽やかや木目正しき床柱       向笠 千鶴子

名月に歩み寄るごと能はじまる    見田 英子

イソップの絵本抜け出で紅茸     久保田 庸子

杣道や毬栗弾けこぼれさう      吉藤 とり子

草雲雀鳴いて天心旧居跡       高平 嘉幸

月光を汀にたたむ弓ヶ浜       石澤 青珠

火の恋し夜更けのピアス外すとき   吉村 ゑみこ

十日月哀しい歌をほがらかに     谷中 淳子

今日白露雨本降りの音となり     森島 弘美

雨止んで月の家路となりにけり    吉田 七重

秋霖やものみな影を失へり      吉本 紀代

猿酒や飛鳥に酒船石のあり      久保 タツヱ

むづかしき健康長寿柿の秋      野 ふよ子

秋風や小津安二郎の散歩道      小林 邦子

足許を濡らして帰る葛の雨      近藤 れい

向島鞣し工場の秋暑し        長谷川 あや子

子規忌なり十七音も球音も      西浦 すみ恵

流木にとどまる秋の蛍かな      小林 ゆめ子

行く雲や五感戻して野路の秋     惣野 圭子

松手入れ樹形寂しくしてしまふ    珍田 ミヱ子


     上掲の作品について、一句鑑賞文をお寄せください。
    一句について200字以内、編集部宛てFAX(042-473-3632)
    にてお送りください。掲載させていただいた場合、
    俳誌「繪硝子」を贈呈いたします。



 一句選評 (同人集より) 和田順子選

足許を濡らして帰る葛の雨   近藤 れい

葛が茂って道端へ伸び出しているのだろうか。葛に降った

雨が足許を濡らす。小説の書き出しのように抒情豊かである。

<あなたなる雨夜の葛のあなたかな・不器男>の句を

ふっと思い出させる。

人におもねらない句の好さを作者も知っているようだ。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

彩るや松葉牡丹の打ち揃ひ   小林 ゆめ子

分かりよすい写生句ながら、調べの好さの中に作者の自然を

愛おしむ気持ちが良く出ている。松葉牡丹は牡丹のように

華やかではないが、精一杯咲いている元気の良い花である。

彩りよく咲いて、「打ち揃ひ」の表現がよかった。