今月の推薦句 和田順子選(清韻集・風韻集・同人集・繪硝子集より)


月の出はいつも古風に松納     向笠 和子

吉書初め青墨選ぶ返し歌      下鉢 清子

刷りたての三嶋暦や梅雨兆す    河合 寿子

淨泉を飲みて柄杓を正し置く    波木井 洋子

躓くものなくて躓く五月闇     小松 洋子

蔵壁に吊す車輪や山笑ふ      杉山 京子

野火止塚業平塚と青き踏む     平 嘉幸

雨あがる旅のはじめの青茅の輪   石澤 青珠

岩祀るここより黄泉の木下闇    金山 征以子

足場解くいよいよ白き夏の雲    吉田 七重

すこやかに父母在りし日浜拝    吉本 紀代

から松にから松の風五月美し    倉橋 廣

流木に葉のついてゐる九月尽    松岡 洋太

上絵師の紋章展や菊日和      長谷川 修子

太閤の土居が住処や穴惑      石澤 敏秀

秋草や口碑となりて上人塚     小野 英明

大空や心連れ去る鰯雲       吉瀬 公夫

ハンガーに干すジーパンと吊し柿  堀 美和子

乾びゐてどこか光りぬ鵙の贄    廣田 生子


     上掲の作品について、一句鑑賞文をお寄せください。
    一句について200字以内、編集部宛てFAX(042-473-3632)
    にてお送りください。掲載させていただいた場合、
    俳誌「繪硝子」を贈呈いたします。



 一句選評 (同人集より) 和田順子選

流木に葉のついてゐる九月尽   松岡 洋太

流木と言えば、長い間水の中を漂って流れ着いた木材を

思うが、山から伐り出して里に下ろす材木も流木という。

しかしこの場合は漂ってきた木である。もう命など無い

はずの木に葉が付いている意外性が面白い。

九月尽なので台風で流れてきたとも取れるが、それでは

つまらない。この葉は流木にわずかに残っていた生命力と

思いたい。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

秋草や口碑となりて上人塚    小野 英明 

この上人塚は吟行会で訪れた日蓮上人を指しているの

だろうか。後に上人と崇められる高僧であっても、

慕う人もあれば、反逆するものもあり、迫害と言う試練が

つきものである。

口碑は、口から口へ言い伝えられてやや確定した伝説。

「割れて砕けて裂けて散るかも」と実朝が歌った伊豆の海に

置いて行かれた日蓮上人の俎岩を皆で眺めた。

秋草の崖下であった。