今月の推薦句 和田順子選(清韻集・風韻集・同人集・繪硝子集より)


福寿草明るき声の囲みけり      下鉢 清子

ゆつたりと市電行き交ひ春浅き    北見 さとる

冬萌や美濃獅子庵の梅花仏        藤田 純男

冴返る古城に残る傷あまた        柳田 聖子

次の間の寒気が襖あけるたび     波木井 洋子

思はざる長寿大事に初山河      小松 洋子

寒木瓜や生涯拙を全うす       平 嘉幸

静けさを松に集めて冬の寺      石澤 青珠

寒肥を終へたるかなた茜雲      関口 玉枝

十二月八日妙に静かな鴉なり     金山 征以子

つつましく生きし世代や女正月    吉村 ゑみこ

山頂の日の燦燦と山始        田島 昭代

餅配おうつりといふ習ひあり     永見 るり草

寒椿影置く高見順の墓        槇 秋生

子も孫も松も帰して七日かな     千葉 喬子

鬢付けの匂ふ力士や初電車      山口 冨美子

すぐ翳りさうな日の差し枯木立    近藤 れい

年惜しむ世過ぎの日日の変らねど     嶋村 恵子

どんど焚く村は一つの空となり    河角

寒の水飲みて背骨を立てなほす    安原 憲子

人体の骨は二百余寒に入る      小林 千秋

うやむやを払ひ切つたる冬木かな   宮 紀子

大寒の日だまりにゐてうら淋し    八木沢 孝子

乾きたる新聞の音寒に入る      清水 義和


     上掲の作品について、一句鑑賞文をお寄せください。
    一句について200字以内、編集部宛てFAX(042-473-3632)
    にてお送りください。掲載させていただいた場合、
    俳誌「繪硝子」を贈呈いたします。



 一句選評 (同人集より) 和田順子選

年惜しむ世過ぎの日日の変らねど  嶋村 恵子

「世過ぎの日日」という落ち着いた感慨に惹かれた。

 ごく普通の暮らしだが恙なく日々がすぎる。

 それでも、年の暮れには、過ぎ去った日日を

 愛しく思うのである。

 世過ぎの日日の変わらないことが、毎日が思うように

過ぎていくことが、実は一番大切なことであり、

作者も望んでいることなのであろう。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

人体の骨は二百余寒に入る   小林 千秋

  一句二章の取り合わせによって生きている。

  「人体の骨は二百余」という謂わば常識的事実と

  「寒に入る」という情緒的季語が思わぬ観賞の

  広がりを見せる。

  人体には最大で二百八個の骨があるといわれている。

  しっかりと体を支えている骨である。

  「寒に入る」には、単に寒さが厳しいというほかに、

  寒さに向かう心構えも含まれる。人体も人体の骨も

  寒さを切り抜けよう。