今月の推薦句 和田順子選(清韻集・風韻集・同人集・繪硝子集より)


移り来て蔵書少なき二月かな     向笠 和子

昨日より今日の起き伏し春めきぬ   下鉢 清子

花冷えの「蝦蟇の口上」白熱す    北見 さとる

水温む湖北姉川妹川         藤田 純男

立春や伽藍の屋根の鳩百羽      柳田 聖子

唐国の石筍の庭春を待つ       河合 寿子

下萌や緑地課長が見回りに      久保田 庸子

紅梅の蘂盛り上がる菟絲子の忌    杉山 京子

けふよりは雛と語らむ一人住み    梅田 利子

雪解風伊吹山最も輝けり       岩田 洋子

竜神を銅鑼もて起こす寒詣      石澤 青珠

春や立つ亡夫育てし鉢の花      古賀 幹子

桜貝拾ふ若き日拾ふごと       吉村 ゑみこ

船笛の風につまづく余寒かな     吉田 七重

春立つと声にして身のほぐれけり   吉本 紀代

膏薬の冷え垂直や旅の宿       向笠 千縁子

秩父村の楮蒸す香の甘きかな     久保 タツヱ

朝が来て又一日過ぐ花大根      野 ふよ子

野焼き待つなべて飴色草千里     小林 邦子

金平糖こぼれて跳ねて春めく日    槇 秋生

豆に人人に豆降る追儺式       千葉 喬子

大島の晴れて間近や若布干す     山口 冨美子

探梅のはじめは山を見上げたり    近藤 れい

カーブミラー立春の日を地にこぼす  清水 美恵子

やはらかきテニスのラリー春隣    菅野 晴子

くるぶしに春の寒さがまとふなり   山本 恭子

深空より声切り落とす冬の鵙     清水 義和

梅の花光琳の川光りゐて       小林 千秋

鳥帰るころ人間のまぶしがる     百瀬 七生子

紅梅の朝白梅の夕べかな       石澤 敏秀


     上掲の作品について、一句鑑賞文をお寄せください。
    一句について200字以内、編集部宛てFAX(042-473-3632)
    にてお送りください。掲載させていただいた場合、
    俳誌「繪硝子」を贈呈いたします。


 一句選評 (同人集より) 和田順子選

カーブミラー立春の日を地にこぼす  清水 美恵子

車を運転していると、信号のない交差点やカーブしている

道路に合流するとき、頼もしきミラーである。

道路をしっかり写すように少し下向きである。

このミラーに春の日差しが当たって地面に反射している。

よく見かける道路標識をこんなにも詩的に捉えて素晴らしい。

カーブミラーもバックミラーもサイドミラーもすべて

和製英語であることにも驚きである。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

深空より声切落とす冬の鵙     清水 義和

 鵙は百舌鳥とも書き、秋から冬に高い木に止まって鋭い声で

鳴いている。それで百も舌を持つ鳥とかくのだろうか。

キィーキィーと鋭い声は「声切り落とす」の表現のように

突然に頭上から響いてくる。良い表現を見つけられた。

群れをなさず、高空で縄張りを主張する鵙の生態が

よく掴めている。