今月の推薦句 和田順子選(清韻集・風韻集・同人集・繪硝子集より)


北吹くや(おもて)起こして剣岳        下鉢 清子

先生に供へし美濃の富有柿       藤田 純男

枯芒ばうばうとして沼の暮       柳田 聖子

天空へ城押し上ぐる冬紅葉       河合 寿子

漱石忌角帽の無き早大生        久保田 庸子

藪巻のちよんと切りたる縄の首尾    杉山 京子

外灯の下一群の枯尾花         吉藤 とり子

青空に月残りけり冬至けふ       小野田 征彦

平家谷八百年の火吹竹         石澤 青珠

切干や風の秩父の匂ひなる       田島 昭代

菰巻かれいよいよ深き松の黙      吉田 七重

雪吊の雪来るまへの男振        永見 るり草

翅立ててより綿虫の立ちにけり     倉橋

柿熟るる屋根つながりに馬屋母屋    千葉 喬子

十二月八日耳鳴りじつと聞く      山口 冨美子

秋時雨さそひあふごと灯の点る     近藤 れい

極月や同じ石に躓いて         指田 昌江

城石のやうに薪積み冬屋敷       村上 コ男

もうすこし生きてみやうか明の春    河角

加湿器の湯気の優しき保健室      吉本 安良

数へ日のロビーに世界の時刻表     小林 千秋

あつさりと裸木となるさるすべり    平野 暢行



     上掲の作品について、一句鑑賞文をお寄せください。
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    にてお送りください。掲載させていただいた場合、
    俳誌「繪硝子」を贈呈いたします。



 一句選評 (同人集より) 和田順子選

城石のやうに薪積み冬屋敷   村上 コ男

 お城の石積みのように無駄な隙間なく積まれている薪が

見えてくる。これからに冬に使い切る燃料なのだろうか。

相当の量である。年期の入った積み方である。冬屋敷の生

活を考える。窯元であればすぐに無くなるであろうし、薪

暖炉や囲炉裏でも日ごとに減っていく。

 「城石のように薪積む」のが、心安らぐ風景なのである。

懐かしい句に出合った。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

加湿器の湯気の優しき保健室  吉本 安良

 「湯気立て」が冬の季語になっている。冬の乾燥を防ぐ

ため、火鉢やストーブの上にやかんなどを置いて湯気を立

てた。冬らしさを感じたものだが、今は加湿器が便利にな

った。これが保健室に置かれて優しい湯気を立てている。

 保健室は小学校だろうか。優しい保健室の先生もいて、

体も心も癒されるだろう。