今月の推薦句 和田順子選(清韻集・風韻集・同人集・繪硝子集より)
    来月(7月号)より、この欄は、体裁を新しくして掲載
    いたします。今月は、先月(5月)号のままといたします


 雪の果使ひ込んだるシャベル立つ     下鉢 清子

菟絲子忌の京都は春の雪となり      柳田 聖子

大寺の唐子嬉戯の図浅き春        河合 寿子

山の田の廃れも雀がくれかな       小松 洋子

果樹園の寒の剪定響き合ふ        岩田 洋子

順浄院菟絲子の忌なり薄紅梅       小野田 征彦

庫裏の梁燻しびかりに春寒し       高平 嘉幸

人形焼ころころ生まれ春立つ日      石澤 青珠

豆剥けば夫の黙つて来て剥きぬ      谷中 淳子

春浅し弁当箱の博物館          森島 弘美

うしろから呼ばれたやうな春の土手    吉田 七重

日輪の月のごとしよ春の雪        永見 るり草

夫しのぶ有楽椿の今朝の色        高野 ふよ子

梅東風やお局の間の船箪笥        倉橋

薄氷に午後の薄日のありにけり      槇 秋生

待春のうぐひす張りを鳴かせけり     千葉 喬子

梅三分杏仁豆腐のやはらかく       下島 正路

料峭や「斜陽」ゆかりの屋敷跡      山口 冨美子

惜命碑暮れて椿に風残り         石澤 敏秀

省略の極みのかたち鶯餅         弟子丸 すみえ

龍の玉海も空をも知らぬなり       浅岡 えい子

門前に踊るかつぽれ春隣         鈴木 勢津子

思ひ切り叩けば鳴るか冬の空       宮 紀子

すこやかな土の黒さや種浸し       本田 しげき

舟と舟三艘つなぎ涅槃西風        吉本 安良

寒空へ響く鎌倉木遣歌          吉田 玲子


     上掲の作品について、一句鑑賞文をお寄せください。
    一句について200字以内、編集部宛てFAX(03-3999-0018)
    にてお送りください。掲載させていただいた場合、
    俳誌「繪硝子」を贈呈いたします。



 一句選評 (同人集より) 和田順子選

住職に酒宴の多し山笑ふ  宮原 さくら

   御坊さまは謹厳実直、お酒など飲まれない筈なのに

  酒宴の席へよくお出かけである。春には法事も多く

お酒の席も多く「山笑ふ」が面白く付いている。

   こっそり飲んだお酒は般若湯、知恵を働かせ血行を

良くする湯というから、理屈に適っている。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

    漏刻のひびきを今に宮の春  惣野 圭子

  漏刻は水時計、滴る水の量によって時間を決めた。

  室内にも置かれるが、飛鳥には屋外の遺構も

残されている。これは、残されている漏刻を

動かして往時の音を懐かしんでいるのであろう。

春の宮は、のどかな飛鳥地方の宮であろうか。