今月の3人集   和田順子選
            
         今月から風韻集作家の「3人集」を始めました。
         六句揃って推薦出来る作家です毎月替わります。
         

     初花    高平 嘉幸

  初花に白寿をめざすこころざし

  無言館出でただ無言深き春

  門扉なき全生園や桜満つ

  波郷句碑ひときは桜吹雪かな

  姨石てふ大磐石や桂の芽

  嬰児の歩み危ふし春の芝

 

     春の鳰   杉山 京子 

  はしきやしをりをりこゑの春の鳰

  花吹雪受けてをりたる無一物

  花曇人のあとゆく泰けさよ

  手の甲にノートに花の散りにけり

  紫木蓮白木蓮と散り敷きぬ

  釣人に寄りて離るる花筏

 

     惜命碑   吉田 七重

  飛花落花光の中の惜命碑

  沈黙の間も落花波郷句碑

  木苺の花の白さよ病舎跡

  四十雀よく鳴く波郷呼ぶやうに

  橡の木の芽吹き明らか病舎跡

  飛花落花波郷を偲ぶ誰彼に



 一句選評 (同人集より) 和田順子選

口論に勝ちて淋しき朧の夜   清水 ひとみ

 ちょっとしたことに口論となった。言い争ってはみたものの、

反省も少し出てきた。言い過ぎたかしら間違っていたかしらと

今度は自分を責める。

 些細なことで言い争った後の寂しさは、朧の夜が慰めてくれる。

誰にでもある心の葛藤を素直に詠んでいる。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

春の夜や革命前のやうな闇   請関 くにとし

 作者は秩父にお住まいなので、あるいは秩父国民党の歴史を

ご存知かもしれない。 春の夜に対して「革命前のやうな月」

は衝撃的である。秩父事件は十一月であったが、二月ごろから、

革命の動きはあった。神社などの闇へ、静かに人が集まった

のであろう。