今月の三人集  和田順子選
   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

    余花の雨    石澤 青珠

カヤックの櫂は翼や谿五月

仲見世の人波親し傘雨の忌

惜命の句碑ひそとあり余花の雨

多佳子忌の空は生絹(すずし)を張りにけり

子宝といふ語ありけり端午の日

若きらの大きな歩幅街五月


    姨捨      吉田 七重

姨石は桐咲く高さみな仰ぐ

老鶯や紬の里の雨匂ふ

黒揚羽面影塚に()ちしとき

姨捨の雨に色ある桐の花

代掻きの平を尽くし男去る

姨捨の伝説抱く青嶺かな


    貝寄風     近藤 れい

しやぼん玉風を残して消えにけり

貝寄風の飛ばす白波俊寛忌

機音の軒に育ちて夏つばめ

待つといふ時のしづけさ竹の秋

妻女山の今をしづかに夏木立

代掻の高きに始む奥信濃


 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

著莪の花ゆふぐれの眼はぼんやりと  廣田 生子

  薄紫のあやめに似た著莪の花は、山道や樹下に群咲いて

 美しい。夕暮時はぼんやりと眺められる花ではあるが、作者は

 自身の目がぼんやりしている、と詠まれる。

  一日の終わり、ほっとしたゆうぐれには、すべてのものを

 ぼんやり眺めてしまう。湖畔を眺める黒田清輝の女性をふと

 思う。

 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

     戦はぬ国美しき五月かな    大橋 スミ

  戦はぬ国は日本と思いたい。憲法を守って、国民の気持ちも

 揃って日本は終戦後戦争をしていない。世界情勢を見れば素晴

らしいことだと思う。

 五月も万物の生命が輝く素晴らしい季節である。

 こんな国に生まれて、この美しい山河がいつまでも続いて欲

しいと願うばかりである。