今月の三人集 和田順子選 風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。 |
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走り梅雨 岩田 洋子 走り梅雨女人高野の坂険し 軒深き室生の塔や梅雨に入る 心地よきバスの疲れや合歓の花 走り梅雨水防倉庫の赤ともし 対岸の渡船呼ぶ旗朝ぐもり 喪の家の女系家族や沙羅の花 梅雨晴 谷中 淳子 まだいろのあはくて雀巣立ちけり 桜桃の四五顆太宰旧居の碑 太宰の忌靴の中まで雨しみて 梅雨晴や雲の流るる玻璃みがく 毀たれし母校にひくく夏燕 泡吐きて泡とあそべるめだかかな 牡丹散る 下島 正路 晴れてゐてしきりに牡丹散る日かな 苔のむす鎌倉古道滴れり 裏山のやさしき風や今年竹 夏草や波音かすかに砲座あと 房総の小さき城址枇杷熟るる ひとつひとつ灯る漁火梅雨の入
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一句選評 (同人集より) 和田順子選 | ||
海霧深し地球岬の遠汽笛 清水 善和 広大な景色の広がる一句である。地球岬の正しい名前は チキウ岬、アイヌ語のケプチから来て、北海道南西絵鞆半島 にある。行ったことがないが岬の先端に立つと地球の丸いことが 実感できるのだそうだ。 たまに机を離れてこんなところに立ってみたい。 |
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一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選 |
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大きな荷を背負ったご強力が、荷の安定を確かめるために ひとゆすりしている。そんな様子が見える様である。歩荷は、 登山の荷を運び上げる人で、以前は季語として独立していたが、 今は「登山」の傍題にも出ていない。 |