今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

   終戦日   小野田 征彦

 剃り残す髯の白さや今朝の秋

 雨しとど一日黙す終戦日

 卓上のピースの箱や秋暑し

 庭師いま三時の茶どき法師蟬

 大数珠を回して辻の地蔵盆

 ひともとの松に風くる宗祇の忌

 

   盆三日   石澤 青珠

 産土の路地の路地まで祭の灯

 舟洗ふ指の先まで潮焼けて

 揚げ船を鴎に預け盆三日

 賑やかに海女の設ふ施餓鬼棚

 流灯を抱いて静かな列に蹤く

 流灯の先頭としてためらはず

 

   出雲勾玉  山口冨美子

 新涼の出雲勾玉碧透く

 秋怒濤遠流の島の遥かなり

 新涼のせせらぎ(きく)す神の森

 出雲路の風の夕菅やさしかり

 波光り寄す新涼の弓ヶ浜

 耳澄ます旅寝馬追鳴きゐたり


 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

 羽化のごとく芭蕉玉解くうすみどり   安原 憲子

  芭蕉はバナナに似た実も付けるが食べられず、葉を観賞する。

 青芭蕉、枯芭蕉、玉巻く芭蕉など、この句は玉巻く芭蕉の美しさを

 詠んでいる。まるで昆虫の羽化のように、うす緑の葉の美しさが

 広がっていく。

  感動の瞬間を捉えた言葉「羽化のごとく」は、常套的でなく、

 感性が見受けられる。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

    貴婦人の鍔広帽子オクラ咲く   小松田 純子

  貴婦人の鍔広帽子と言えば、イギリスで六月に行われるダービー

 観戦の淑女のあでやかな帽子を思うが、これはオクラの花が季語

なので秋の装いである。オクラの花は黄色で中が赤く、花びらは

帽子の鍔のように開いている。こんな理屈をつけなくとも、見事な

二物衝撃の一句になっている。季語は離してのよい例と思う。