今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

   小鳥来る  岩田 洋子

 いちはやくうるし紅葉の輪中堤

 立読みの書店のつるべ落しかな

 落款は秋夕焼と同じ色

 読み耽る菟絲子句集や秋深し

 朝どりの紫ふかき秋茄子

 庭に向く木椅子ふたつや小鳥くる

 

   星まつり  石澤 青珠

 東京に土の減りゆく灼け雀

 星まつり結城は機の早仕舞

 黙黙と盆路を刈り長子たり

 佃堀たぷんと差せる鯊の潮

 口中の飴甘すぎる木歩の忌

 木歩碑や声を限りに残る蟬

 

   葛の花   近藤 れい

 水切つて秋の燕となりにけり

 蒲の穂の握ればかへす力かな

 稲びかり鉄橋全容見えにけり

 行き帰り葛の雨なる介護かな

 病棟の廊下を迷ふ秋暑かな

 咲きのぼる真葛は昼をしづめをり

 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

   稲の波寄するばかりや障の神  清水 ひとみ

  疫病や疱瘡を流行らせるのは疫病神の仕業と畏れられ

 村の入り口などには、疫の神(いものかみ)や障りの

 神が祀られいた。今も残されて、村人に守られ続けて

 いる。実りの秋を迎えて、収穫にも皆の健康にも障りが

 なかったように、稲穂が揺れている。平和なことの嬉しい

 風景である。

 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

   秋気配石の湿りを踏みゆきぬ  吉本 安良

  朝露だろうか、昨夜の雨の名残だろうか、まだ

 湿っている甃を歩きつつ秋の気配を感じている。

  俳句の感性に男女の差はないと思いつつ、男性の

 句であったことに一同ほほうの声が上がった。

  オーソドックスな句でありながら、秋にはこんな

 句が心地よい。