今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

    鯊 和  千葉 喬子

 雲の高さばかり見る日や九月尽

 突堤に猫の来てゐる鯊日和

 天高し私ひとりの昼のバス

 鞍馬天狗中途で曇り青写真

 一仏に一灯寺の秋深む

 頂まで人の世の灯や今日の月

 

    鮭   村上 コ男

 星光る梁に鮭吊る草の宿

 川上る鮭に鋭き眼の力

 秋味の婚姻色や祝ひ膳

 狩野派の絵師のごとくに松手入れ

 秋夕焼大きく入れて駄菓子店

 もう少し仕事したさう捨て案山子

 

    葛 す  森島 弘美

 苔深む青木ケ原の卵茸

 竹幹を叩けば響く秋の音

 集落に棚田のありぬ彼岸花

 葛晒す桶の深さよ山の影

 動物の慰霊碑木の実落つる中

 見つめ合ふゴリラと人の秋日和

 

 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

    そぞろ寒グリムの恐い童話かな   石関 双葉

  白雪姫や赤ずきん、ヘンゼルとグレーテルなど皆読んだ

 グリム童話である。グリム兄弟が民話や言い伝えを集めた

 ものだが、教訓的ではあるが恐い結末が待っている。

  白雪姫に毒の林檎を食べさせたお妃は、真っ赤に焼けた

 鉄の靴を履かされ死んでしまう。「犬と雀」雀の言うことを

 聞かず犬を轢殺した御者は、馬三頭と自分も殺される

 運命に合う。童話と言えど本当は恐い話。

 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

    大都会月に近づく観覧車    守住 京子

  何気なく詠まれているが、都会の息苦しさから観覧車が

 月へ逃れようとしているようにも感じてくる。

  少しづつ動いて月に近づいて行く楽しさを詠んでいるが、

 大都会の喧騒を離れて静かな月へ行ってしまいたい夢が

大人になってもまだあるようだ。

 「大都会」がそう感じさせる。