今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

    山茶花  槇 秋生

 文鳥の卵孵りぬ神の留守

 冬めくや古き海員クラブの灯

 鎌倉に冬ぬくき日やバザー立つ

 冬日和ゆつくり渡る交差点

 紅葉散るころ鎌倉をレトロバス

 山茶花や声を掛くれば散りさうな

 

    兎   吉田 七重

 自適とは淋しくもあり日向ぼこ

 しみじみと一人と思ふ風邪に寝て

 寒波急ひとりの錠をかたく閉づ

 冬蜂の戻つて来たる日向かな

 病む人に言葉をつなぐ蜜柑かな

 少年の胸へ兎を返しけり

 

    茶の花  倉橋

 綿虫を放ちし百人番所かな

 石蕗咲くや大奥跡を照らすべく

 枯れ枯れて雑木林にある自由

 文学館銀杏黄葉に抜きんでて

 茶の花や目立ち嫌ひの為人(ひととなり)

 菊坂に雨上がりけり一葉忌

 

 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

    身に入むや全生園にくらしの灯  長谷川 あや子

  かつては隔離政策がとられていたハンセン氏病の療養園は

 全国にあり、多磨全生園もその一つ。病状の軽くなった人たちは、

 結婚もし家庭を持つこともできたが、囲いの外へ出ることはなかった。

  今は塀もなく自由に出入りできるようになったが、なお残された

 生活棟にくらしの灯をともし続ける人たちが残されている。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

      空真青戸惑ひの日の帰り花  久 久美子

  「惑ひの日」がよかった。何かに戸惑うことがあったのだろう。

 あれこれ心の整理をしていると帰り花に出合った。

  あたかも「貴方の気持ちはここからですよ」と教えられるように

きれいな帰り花。心象がよく捉えられている。