今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

    浮寝鳥  柳田 聖子

 踏ん張つて水のリズムの紙漉女

 山の日や楮積まれて和紙の里

 波郷忌の砂場に遊ぶ寒雀

 築山の日差しを恋ふる冬の鷺

 池の面の煌めき集め浮寝鳥

 空風や攫ふものなき古戦場

 

    冬に入る  石澤 青珠

 一枚の青空しんと冬に入る

 泣けば泣く双子小春の乳母車

 極月の顔溜りゆく交差点

 終バスに乗り合はせたる冬の貌

 鏡屋の鏡の中もクリスマス

 鏡中を横顔ばかり駅師走

 

    山眠る  田島 昭代

 いしぶみに峠の由来山眠る

 遠山に雪の来てをり味噌仕込む

 木洩れ日の林紅さす冬苺

 杣の訃を告ぐことぶれや山眠る

 水音の字をめぐりし小六月

 冬麗の武甲嶺創を深くせり



 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

    からたちの鋭き棘の十二月   鈴木 勢津子

  よい香りの白い花を咲かせる枳殻も十二月のころには

 葉も少なく鋭い棘ばかりが目立っている。

  そのままを詠まれた句のように見えるが、十二月の

 季語が大変利いている。何かせわしく、気も尖りがちな

 十二月になって、ふとからたちの棘に目が止まったのであろう。

 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

    十二月八日見上ぐる空の黙   久 久美子

  十二月八日は日本軍が真珠湾攻撃、マレー半島上陸を機に

始まった太平洋戦争の開戦日である。空にはたくさんの軍機が

飛んだことであろう。戦後七十年以上たって、当時の戦勝の

喜びとはうらはらに、あれでよかったのであろうかとの忸怩

たる思いも抱いている。 空を見上げても解答を得られず、

押し黙った空があるばかり。