今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

   初 汀   石澤 青珠

 一舟も置かざる湾の淑気かな

 初汀しづかに光畳みけり

 観音お朱唇ひとひら冬ざるる

 繭玉や今半に着く人力車

 歳月に傾ぎて雪の開墾碑

 冬枯へ微かな笑みを飛鳥仏

 

   元 朝   下島 正路

 なに事も無きこと願ひ初御空

 ありもまま己あるなり初鏡

 掛け軸は福寿康寧雑煮膳

 元朝や孫居て子の居て酔うてゐて

 松過ぎてしづかに暮らす日日をまた

 さざなみの立ちて上げ潮寒の入り

 

   数の子   松岡 洋太 

 群衆に鰭あるごとし年の暮

 数の子噛み死にたいなんて嘘の皮

 いつも来る鳩の来てゐる三日かな

 令嬢と乗り合はせたる淑気かな

 裸木に潮騒とどく明日は晴

 正月や海の光の届く街



 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

   列につくことも嬉しき初詣   小林 ゆめ子

  まずは初詣とでかける。いつもの産土神社へ参詣する人

 どこへ行こうかと元気な人、いろいろだが長い行列が何

となく嬉しい。連帯意識が芽生え並ぶことが目出度く嬉

しいのである。初詣は善男善女の大和民族になる。

 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

   誰も居ぬ部屋の寒さや蘭真白  守住 京子

ひと気のない寒さをさらっと詠まれてあるが、

作者は肉親を亡くされたばかりだ。そう思うと

誰も居ない部屋の寒さはひしひしとさびしさを

伴って感じられる。白い蘭が備えてあるのだろう。