今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

   うららか  中野 冨美子

 黙想の静かな熱気復活祭

 手のひらに落花とまらず今を飛ぶ

 春愁やひとり静かに香を聴き

 囀りのふくらむ一樹遊歩道

 うららかや園丁長き竹箒

 武蔵野の古き寺なり馬酔木咲く

 

   風光る   千葉 喬子

 里山のカヤック工房風光る

 発掘の壷に耳四つ山笑ふ

 杼と筬の閑かな間合ひ春深む

 チョーカーを外すうなじや桜冷

 囀りを遠ざけて入る無言館

 花水木街路より町復興す

 

   暖か    松岡 洋太

 向き合うて暖かと言ふあたたかし

 藤沢に体馴染みし桜かな

 花びらを貫いてゆく女靴

 耳にまだタンゴの調べクロッカス

 踏切が鳴る春大根かかへをる

 見て過ぎる昔の会社花ぐもり

 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

     秩父には糸繰り唄や桑を摘む   金子 ふみ子

   糸繰り唄は、繭から糸をとるときの単純な作業を励ます

  ために唄われてきた。養蚕の産地によって唄われる歌も違った

  ようだ。秩父も養蚕の盛んだった土地、桑を摘みながら

これからの作業を思っている。

 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

   花散るや今でなければならぬこと  高久 久美子

 「今でなければならぬこと」は、何も描写していない観念的な

言葉なので、景色は見えてこないが気持ちはしっかり見えてくる。

「花散る」に思う日本人の心情と重ねると、「今でなければならぬ

こと」という潔い気持ちは、誰にでも分かるのではないだろうか。

 一斉に散る花は潔い決断となにか通じるのである。