今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

   朴の花   岩田 洋子

 ばらの花束抱きて重し叙勲享く

 喜びを亡夫と分かちし若葉風

 晴天に全き朴の花開く

 薔薇園の薔薇の疲れし昼下り

 草取りの寡黙に過ぎし一日かな

 葉桜やジョギングの()に追ひ越され

   

   かきつばた  小野田 征彦

 老鶯や勿来古道の登り口

 卯波さ波寄せ来る塩屋岬かな

 在五のうた思ひ出させてかきつばた

 竹ひごの鳥籠吊し夏のカフェ

 新緑に酔うて鉄路の旅終る

 落し文ころりと近代文学館

 

   潮境    石澤 青珠

 夏鳥の頻り白水阿弥陀堂

 千年の真闇涼しき阿弥陀堂

 瞑りて説く仏縁や新樹光

 ほととぎす勿来の関に名告りけり

 関の碑の彼方卯月の潮境

 灯台に津波の記憶月見草


 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

   ()()()()の風紋美しき薄暑光  倉本 典子

  薄磯はいわき吟行会で訪れ、津波の罹災者、行方の

知れない方たちのために皆で黙祷をした海岸。海は

あくまで穏やかで美しい海岸であった。豊間、薄磯などは、

特に被害が大きかったと聞く。普段はあまり耳にしない

地名であるが、いわきに来たのである。

 地名に挨拶しようとの呼び掛けに応えて下さった。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

   代掻きの水のんのんとゆき渡り  石川 久仁子

  秋田で田植えもされる石川さんの句。「みずのんのんと

ゆき渡り」が作者の実感の表現であるが、私たちにも十分

思い描けて素晴らしい。

  音もなく田を満たしてゆく水の様子が「のんのん」。

力強い水の 広がりを感じ取れる。同時に作者の米作りへの

よろこびも感じる。