今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

  バッハ祭  谷中 淳子

 噴水のしぶきや野外音楽堂

 薔薇の門牧師の鳴らす鍵の束

 バッハの墓捧ぐるならば金の麥

 ハレの空映して売らるさくらんぼ

 泉に掌浸し旅愁をはらひけり

 菩提樹の花降り終はるバッハ祭

 

   泰山木の花  槇 秋生

 予後の日日泰山木の花咲いて

 明易のアザーン短く終はりけり

 梅雨寒や固く閉ぢたる貝の蓋

 盲導犬半歩先行く木下闇

 がらんどの保存民家や南風吹く

 夏服に二泊三日の旅の皺

 

   泰山木の花  山口 冨美子

 図書館のまど六月の通り雨

 六月の雨夜の藤村詩集かな

 父に似る手相泰山木の花

 座禅堂清閑として緑雨かな

 心平の詩を育みしいわき初夏

 紺碧の海やいわきの夏料理


 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

   父の日の何があつても正露丸   小野 英明

  「何があつても正露丸 」は、お父様の一徹な好みが

 よく表現された。お腹を壊しても頭が痛くても正露丸を

 飲めば治るという確固たる自信である。

  大事なことである。<父の日の父何があつても正露丸>

 の父が省略されている形だが、十分わかる内容。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

   出羽富士の今日よく見ゆる田を植ゑて  斉藤 依子

   あめんぼの脚に水田のやはらかし    同

  出羽富士は鳥海山のこと。富士と呼ばれるだけに美しい

 形がどこからも見える。掲句二句は鶴岡の作者の田植えの

風景であるが、土地に暮らして感じる詠み方が、たまたま見た

田植え風景とは一味違う。

 あめんぼの脚に水田が柔らかいなどなかなか詠めないこと

である。