今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

   花茗荷  平 嘉幸

 睡蓮の巻葉は風に吹かれ立つ

 三畳の書斎いとほし花茗荷

 アガパンサス咲いて佃のわたし跡

 短夜や明けゆく嶺嶺勢ひ聳ち

 降りさうで降らぬ一日や夏至の空

真つすぐに落ちてしづかや沙羅の花

 

  雲の峰  谷中 淳子

雨近き風の匂ひやもちの花

金蛇の身よりも長き尾を保つ

四丁目交差点より雲の峰

午後五時の和光の鐘の鳴る薄暑

九九となへ下校明日から夏休み

帰省子や灯の下に髪輝けり

 

  炎昼   槇 秋生

魚干す路地の匂ひや朝曇

生コンの枠に固まりゆく炎昼 

風死せる街に献血者が今日も

客のゐぬ方へ首振る扇風機

室外機並ぶ路地裏西日中

熱帯夜モビール止まつてしまひけり


 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

  サナトリウムの白い病舎や梯梧咲く 長谷川あや子

結核療養所として、空気の良い山や海に建てられていた

サナトリウム、今はその目的では使われることは無くなったが、

施設は一般病院として使われる場合もある。白い建物に赤い

梯梧が咲いて明るいイメージになった。我が町の元サナトリウムも

海の見える桜の名所である。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

  百合開く優等生の顔をして  斎藤 依子

百合の花の清楚な感じを「優等生の顔をして」と思い切って

擬人化している。この比喩をなるほどといただいた。優等生は

成績も品行も優れた立派な生徒を指している。香りも良く

姿も美しい白百合などまさに花の優等生。