今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

    髪束ね   杉山 京子

 秋立つと母のごとくに髪束ね

 びんびんとねぶた太鼓や婆様の忌

 ひぐらしの声の中なる眠りかな

 底紅や心にいつも師のありて

 朝顔の紺に執してゐたりけり

 法師蟬なきたつ墓や子と二人

 

    白むくげ  髙野 ふよ子

 八月やあの日あの時雲白く

 戦なきしづかな雨や鳳仙花

 誰か居さう闇の深さの茄子の馬

 白むくげ咲くけふ夫の七回忌

 里山に秋の初風こころして

 新涼や都電に一人早稲田まで


    八月来   松岡 洋太

 さざ波は帰らざる波八月来

 この沖の戦は知らずヨットの帆

 鼻筋に四万六千日の雨

 土用三郎街道のこのさみしさは

 木挽町通りのパナマ帽子かな

 シャワー浴ぶ米寿間近の仁王立


 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

    支へられ被爆の榎蟬時雨  長谷川 あや子

  榎は大木になる。広島か長崎の原子爆弾を浴びたが、

 どうにか命を繫いで生き残った。しかし、あちこち

支えられて立っている様子は、今に生きる証人である。

 樹にはたくさんの蟬が訪れ蟬時雨の励ましである。

 「爆」の字は原爆、水爆に使い、「曝」の字は、原子

力発電所の放射能被曝に使われているようだ。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

   自販機の前で飲み干す夏の空  斎藤 依子

 炎天を歩いて来て、自販機を見つけ、思わず冷たい

飲み物を買い、その場で飲んでいる今年の酷暑の風景

である。自販機は自動販売機、広辞苑に載るほど身近な

存在である。この句を、当たり前の句にしなかったのは、

「飲み干す夏の空」のなんとも豪快な捉え方。一気に、

詩の世界になった。