今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

   星流る  田島 昭代

 山なみに残る夕日や鹿の声

 草の花終の棲家のこともなし

 草付けて峠越え来る盆の僧

 すぐに果つ字の集会秋暑し

 松手入れ済み夕空の広さかな

 峡の村深き眠りや星流る

 

   今年藁  千葉 喬子

 新涼や耳の後ろに川の音

 龍淵に潜み古井戸今も湧く

 清方の女瓜ざね萩の風

 草相撲いつぷく時の大薬缶

 今年藁入れて山羊小屋匂ひ立つ

 末成りを採つて菜園秋収め

 

   秋うらら  指田昌江

 白杖と歩調合ひたり秋うらら

 水引の花退院を祝ふ色

 墨堤の木の香土の花木歩の忌  

 釣り人のからつぽの魚籠秋夕焼

 先生と並びて歩く良夜かな

 補聴器を外して秋の風を聴く


 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

   龍淵に潜みて金の鱗浮く  鈴木 勢津子

  龍淵に潜むという季語を使っての兼題勉強会で高得点

 であった。想像上の季語を使いこなすことはなかなか難しい

 のであるが、この句は成功している。龍が潜んでいる

かのように、龍の金の鱗がぴかりと浮いて来た。

ありそうな情景である。想像上の季語は、それを信じて

 楽しむことが大事である。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

   敬老日老いゆく日日の新しき  髙久 久美子

  敬老の日と呼ばれる前は、老人の日、年よりの日で

 あったことに驚くが、長寿を祝い老人福祉を考える日で

あることには変わらない。

 「老い行く日日の新しき」であることが素晴らしい。

 老いゆく日日は平穏で安かれと願いがちだが、老いゆく

日日であっても、新しい発見があり、新しい思いが湧くと

いう素晴らしい生き方である。