今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

    秋気満つ  河合 寿子

 秋気満つ園の大樹に草ぐさに

 きはやかに琉球つつじ返り花

 揺れもせで木豇豆の実の無愛想

 高く遠き飯桐の実でありにけり

 赤とんぼ湧くやうに増し園の夕

 菊供養明日にみ堂遥拝す

 

    小鳥来る  石澤 青珠

 一瞬の形に乾び鵙の贄

 母の忌の松虫草の潤みかな

 昼ちちろ陶土は水を浸ませて

 すだ椎の洞欠伸めく秋の昼

 東大付属植物園の烏瓜

 愛称は甘藷先生小鳥来る

 

    金木犀の風 谷中 淳子

 月仰ぐわれ見て人の通り過ぐ

 子に問へば芋虫の名もたちどころ

 空暗むほどのとんぼや母は亡し

 かけかへし眼鏡の重さ松手入れ

 草の絮乗つて逗子駅発車せり

 よきひとになれさう金木犀の風


 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

    母に剥く林檎のうさぎ耳たてて  廣田 生子

  りんごの赤い皮を残してうさぎの耳のようにする。

 子供のお弁当に入れたり、フルーツポンチに乗っている。

 この一句の味わいは「母に剥く」である。

  お母様は年を取られて、病床にあるのかもしれない。

 少しでも慰めようと林檎のうさぎを作って、赤い耳を

 ぴんと立てる。

  ゆったりした母子の時間が流れる。ほのぼの温かい。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

    さんま焼く煙も音も皿に乗せ   吉田 玲子

  まだじゅうじゅうと音を立て、煙もあげている秋刀魚の

 焼き上がりをすかさず皿に盛る。おいしそうな匂いも漂って

 くる。誰もが情景を描ける瞬間をとらえている。

  俳句は十七文字で言い切れる文学であるとしみじみ思う。

  作者は十分言い切り、私たちも十分感じ取れた。