今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

   返り花  柳田 聖子

 大白鳥夕日散らして着水す

 音絶えて薄墨に()れ樹氷林

 平成を惜しみ日記を買ひにけり

 縁起物こまごま並べ年の市

 湯豆腐やひとり気ままに老いてをり

 御代三代生きて幸せ返り花

 

   へしこ小屋  向笠 千鶴子

 冬林檎いびつに切れし誕生日

 冬未明いたみの母に添ひ寝せり

 母通ふ冬の厠の明かりかな

 霜の夜の母の眼の雫かな

 ぜんざいに南瓜加へて冬至くる

 雪囲ひ発酵ざわめくへしこ小屋

 

   大根煮て  指田 昌江

 一本は子規の碑に向く水仙花

 浅草の床屋に座る年の暮

 義士の日や朝から豆を煮てゐたる

 二人用の鍋選びをり年の内

 けふ出来しことを思へり年の暮

 大根煮て一病恙無かりけり


 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

   冬銀河地動説より天動説  小林 千秋

  宇宙は太陽を中心にして、地球など様々な惑星が

 回っているという地動説は、小学校で習ったような

気がする。コペルニクスが地動説を唱える以前は、

地球の周りを惑星が回っているという天動説で

あった。このことを知っているはずなのに、いま

冬空を眺めていると天動説もいいかなあと思う。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

   凩や平行するレールの孤独  星 瑠璃子

  決して交わることの出来ない二本のレールを擬人化

 して成功している。木枯らしの吹く中、寄り添いたい

 人間の孤独をレールに託して詠んでいる。

  同時発表の<逃れ来ていづこの冬へ難民の列>も

 世界で起こっている難民の姿を詠んで心打つ。

  俳句の国際化は、自分の心から始めるべきであろう。