今月の三人集  和田順子選

   風韻集作家の中の、今月の推薦作家三人集です。

   蝶凍つる  石澤 青珠

 火事跡といふ怖ろしき黒さかな

 梟の啼いては月を育てけり

 知ってゐることを黙つて冬欅

 ランナーの孤独に冬の雲光る

 美しき紋を合はせて蝶凍つる

 多喜二忌の迅雷海を眠らせず

 

   春一番   髙野 ふよ子

 蕨つむそつと日だまりつむやうに

 下萌や姥が淵へと続く道

 遺影拭ふ暗香届く春となり

 春光や鳶の笛降る比企谷

 海苔舟の上総湊を出でにけり

 春一番千里の馬に乗りてくる

 

   自己評価  松岡 洋太

 葱刻むその拙速を愉快とす

 酒飲みし頃のジャンパー死蔵せり

 ひとり身の朝に声なし寒卵

 寒卵卓の端にて止まりけり

 米寿越えさてこれからや黄水仙

 自己評価近ごろよろし地虫出づ


 一句選評 (同人集より)  和田順子選 

   波郷忌の鶴唳天に響きけり  清水 善和

  石田波郷の主宰誌は「鶴」である。鶴唳(かくれい)

 は鶴の鳴き声を指すが、嘴を高く上げて啼くので「天に

 響きけり」が的確である。丹頂鶴は留鳥であるが、九州に

 秋に飛来して来る鍋鶴などは天に鶴唳が響きわたる。

  波郷忌は1121日、鶴の鳴き声も一段と賑やかな頃、

 そして波郷の教えも広く慕われている。


 一句選評 (繪硝子集より) 和田順子選    

   マフラーに包まれてゐる若さかな  斎藤 依子

  中学生や高校生を見ていると、厚手のマフラーをぐるぐる

巻きにして暖かそうである。マフラーに埋もれて何か安心

 感もあるのだろう。若い人に見かけるようになった。

  「若さかな」が世代の流行をうまく言い当てている。

 若い人が率先しているスタイルである。